<金口木舌>歪んだ事実 - 琉球新報(2018年9月27日)

https://ryukyushimpo.jp/column/entry-808694.html
http://archive.today/2018.09.26-235734/https://ryukyushimpo.jp/column/entry-808694.html

木村拓哉さんと二宮和也さんが初共演することもあって話題の映画「検察側の罪人」が好評だ。2人のアイドルの人気はもちろんだが、原作が「犯人に告ぐ」でも有名な雫井脩介さんによる極上のミステリーとあって、なお評価が高い

▼劇中、主人公の2人の検察官による緊迫した取り調べシーンが出てくる。独特のしぐさで容疑者に迫る様子は印象に残る。本物の検察官の取り調べもかくやと思わせる
▼容疑者の視点からすると、代用監獄に拘束されたまま激しい取り調べが続くと、その孤独感、精神的圧迫は想像をはるかに超える。実際、これまで数々の冤罪(えんざい)が生み出されてきたが、その大きな要因がうその自白だった
▼どうして「うそ」の自白をしてしまうのか。法心理学の浜田寿美男さんは「自白の心理学」で「力の磁場」の作用を指摘し「(うその自白を)チェックできるシステムがいま求められている」と提言している
▼今回の県知事選でも、ネットを中心に候補者について事実でない話が事実であるかのように流布されている。これまで放置されがちだったこの種の言説を検証しようと本紙は「ファクトチェック」プロジェクトを進めている
▼浜田さんは「ことばの世界は現実を離れ、現実を歪(ゆが)める」と指摘した。「歪められた」情報の中で投票する有権者に、正した情報を伝えるのもまた、言葉である。