(余録)「過去から学べない者は、過ちを繰り返す」… - 毎日新聞(2018年9月16日)

https://mainichi.jp/articles/20180916/ddm/001/070/194000c
http://web.archive.org/web/20180916005829/https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-803622.html

「過去から学べない者は、過ちを繰り返す」−−。米国の哲学者、ジョージ・サンタヤーナの言葉だが、過ちが生かされないのが現実だ。ならば過去の失敗から学ぶのをやめてみては? そんな不真面目な考えが、ある実験から導かれた。
集団を、衝動買いの回避体験をふり返るグループと衝動買いの失敗体験をふり返るグループとに分ける。さらにふり返る件数が多い組と少ない組とに細分化する。ふり返った後、今いくらまでなら欲しい物をクレジットカードで買うか、と尋ねる。米バンダービルト大ケリー・ホーズ博士の研究だ。
衝動買いの回避体験を少ない件数ふり返ったグループだけ、他より浪費をしないという結果が出た。成功体験も、数が多過ぎると思い出すのに苦労をし、うまく役立てられない。少ない件数なら個々の体験が鮮明で、次に生きるようだ。
一方、衝動買いのグループは、件数に関係なく失敗を思い出したことで気分が落ち込み、散財に流れた。失敗からは学べず、成功が次の過ちを防ぐ、ということらしい。
金融危機の引き金となった米大手証券、リーマン・ブラザーズの破綻から丸10年。歴史的失敗から何を学ぶか、といった議論が盛んだ。衝動買いと重ねるのはさすがに乱暴だが、失敗に学べない人間としては、発想の転換も一案かもしれない。
過去の成功体験が見当たらなければ、子や孫の幸福な将来を思い描く。それにつながる行動を選ぶ。「未来から学ばない者は、過ちを繰り返す」は、どうだろう。