スウェーデン総選挙 民主党に勢い 「反難民」多様性の国にも - 東京新聞(2018年9月8日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201809/CK2018090802000132.html
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【ロンドン=阿部伸哉】四年に一度のスウェーデン総選挙(定数三四九)が九日、投開票される。世論調査では「反難民・移民」を訴えるポピュリスト政党、民主党が二位争いをしており、前回獲得の四十九議席から大幅に上積みする見通し。高福祉で知られ、多様性を尊重、難民受け入れにも積極的だったスウェーデンも、欧州を覆う難民排斥の動きを受け転機を迎えている。
「妻を虐待しても問題ない国がある。こういう文化や価値観を、男女同権を重んじるスウェーデンに持ち込まれても平気なのか」
民主党のオーケソン党首(39)はテレビの党首討論で「イスラム系の移民凍結」を主張。女性の権利保護を盾に難民を拒否する姿勢に、中道左派社会民主労働党党首、ロベーン首相が「君は女性労働者の権利向上にもそれほど熱心なのか」と反論に躍起となった。
八月二十九日〜九月三日に実施された世論調査では、社会民主労働党の支持率は25・3%。民主党は17・2%で、中道右派の穏健党の17・0%と激しく競っている。別の調査では社会民主労働党民主党の差は2・9ポイントに迫っている。
スウェーデンは人口約一千万人ながら、中東・アフリカから欧州への難民が急増した二〇一五年、十六万人超の難民を受け入れた。人口比では欧州連合(EU)で最多の受け入れ数。
しかし一七年四月にストックホルム中心部でウズベキスタン人の男が運転するトラックが五人を死亡させるテロ事件が発生。今年八月には南部イエーテボリなどで車約八十台が放火される暴動も起きた。治安への不安が高まっているほか、難民受け入れで財政が圧迫され、高福祉社会が揺らぐとの危機感もある。
民主党は、一九八八年発足時はネオナチと関係が深く「極右政党」とされてきたが、若く雄弁なオーケソン氏は過去との決別を宣言し「愛国的な保守政党」として衣替えを図る。「反EU」を掲げ、英国同様の離脱も提唱する。
他の主要政党は民主党との連立拒否を表明し、民主党が政権入りする可能性は薄い。だがどの連立の組み合わせでも少数与党となる見通しが強く、法案通過に民主党を完全に無視するのは難しそうだ。既に選挙戦で多くの政党が難民・移民受け入れ制限強化になびいており、オーケソン氏の発言力は高まっている。