<障害児の放課後は>(上)ずさんな判定 支援の実態 聞き取りなく - 東京新聞(2018年9月6日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/201809/CK2018090602000203.html
https://megalodon.jp/2018-0907-0910-58/www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/201809/CK2018090602000203.html

障害のある子どもが放課後などを過ごす放課後等デイサービス(放課後デイ)が揺れている。四月の福祉サービス事業者への報酬改定以降、開所日を減らしたり、二施設を統合したり、経費節減を迫られた事例が相次ぐ。改定に伴って実施された子どもたちの障害の区分分けでも、反発や疑問の声が数多く上がり、国が自治体に判定のやり直しを通知する異例の事態となっている。戸惑う現場の様子を二回にわたって紹介する。 (細川暁子)
「これから土曜日は、閉所せざるを得ない」。四月中旬、群馬県伊勢崎市の放課後デイ「わんぱくひろば」に、長男の竜暉(りゅうき)さん(15)が通っているパートの小倉理代さん(39)は、放課後デイの職員からこう聞かされて絶句した。
放課後デイは、障害がある子どもたちが放課後や長期休暇などを過ごす施設。竜暉さんは高校一年で、発達障害や知的障害を伴う自閉症があり、意思疎通や読み書きがうまくできない。
土曜日の閉所は、報酬改定で受け取る基本報酬が減るのを受けての対応。国は市区町村に対して、まずは子どもたちの障害の重さを二つに分け、放課後デイは、障害が「重い」子が半数以上だと「区分1」、半数未満だと「区分2」とし、報酬に差をつけた。
わんぱくひろばは、小学一年から高校三年までの利用者十六人全員が「軽い」と判定され区分2に。報酬は区分1より低く、区分がなかった前年と比べると10〜12%の減額。わんぱくひろばでは四月以降、月に約四十万円減った。
しかし、小倉さんは竜暉さんの障害の判定に疑問を感じた。竜暉さんは、重い障害がある人に交付される療育手帳「A」を持っている。判定の際、市からの聞き取りなどは何もなく、四月上旬に「指標該当 無」と書かれた通知が送られてきただけだった。わんぱくひろばの職員も、聞き取りは受けていなかった。「判定方法がおかしいのでは」と抗議した。
この問題は伊勢崎市議会六月定例会でも取り上げられ、市は判定のやり直しを決定。Aの療育手帳を持っている子どもは全員が「指標該当 有」とされ、竜暉さんも「重い」に覆った。わんぱくひろばでは十六人中十二人の判定が変更された。ただ、土曜日再開のめどは立っていない。
市によると、国から子どもの障害を判定するよう通知されたのは二月。四月の報酬改定に間に合わせるには新たな聞き取りを実施する時間がなかったため、以前から実施され、食事の介助が必要かなどを聞き取ってきた状況調査に基づいて判定したという。
全国の放課後デイなどでつくる「障害のある子どもの放課後保障全国連絡会」が二百十カ所を対象にしたアンケートによると、区分2になったのは回答を寄せたうちの八割。「廃止の危機」との声も二割から上がった。判定に際して、市区町村からの聞き取り調査がなかったというところは65%あった。こうした声を受け、厚生労働省は七月、書面のみで判定した場合などは、判定をやり直すよう自治体に通知した。
立正大社会福祉学部の中村尚子特任准教授は「子どもの実態が無視された制度改正だ。どんな支援が必要かという、子どもを第一に考えた視点が欠けている」と指摘する。

<放課後等デイサービス> 発達、知的などの障害がある6〜18歳の子どもが放課後や長期休暇などを過ごす。2012年度に児童福祉法に位置付けられた。全国に約1万1000カ所あり、利用者は約18万人。生活に必要な力を伸ばす遊びや学習などをする。利用者は原則1割負担で、残りは国や自治体が負担する。