LGBT相談の場:あっても児童・生徒に周知せず、7割 - 毎日新聞(2018年9月3日)


https://mainichi.jp/articles/20180903/k00/00m/040/118000c
http://archive.today/2018.09.05-003201/https://mainichi.jp/articles/20180903/k00/00m/040/118000c

小中学校調査
LGBTなど「性的マイノリティー」に関し、悩みを相談できる場や相談相手となる教職員が存在する小中学校のうち、69%がその存在を児童・生徒に周知していなかった。静岡理工科大(静岡県袋井市)の調査で判明した。文部科学省は相談体制の充実を全国の学校に呼び掛けているが、同大は対応が現場任せで「教諭の知識・経験不足で関わり方が分からないのでは」と分析。男女混合名簿導入など性別による区分を避ける小学校は74%、中学校は44%と対応に違いが出ていることも明らかになった。
文科省は2015年、教職員らによるサポートチームをつくることなどを全国の教育委員会に通知。自認する性別の制服・体操着の着用や多目的トイレの使用を認めるなど、各学校で実施されている配慮事例を紹介したが、実際の対応は現場任せになっている。
調査は同大の本多明生・情報学部准教授らが昨年10月以降、無作為で抽出した全国の小中学校5500校に書面で(1)「学校全体で取り組んでいる支援・配慮」(2)「特定の児童・生徒に対する支援・配慮」の2項目を聞いた。小学校は(1)(2)とも831校(有効回答率22%)、中学校は(1)495校(2)500校(同いずれも28%)が回答した。
(1)の設問で、相談できる教職員らがいるとしたのは小学校660校(79%)、中学校441校(89%)。このうち約7割に当たる小学校466校、中学校296校が相談先の存在を児童・生徒に周知していなかった。約8割の小中学校が「性的マイノリティーに配慮する認識が教職員の間で共有されている」と回答する一方、教職員向けの研修会を実施していた学校は小学校220校(26%)、中学校103校(21%)と低水準だった。
小学校と中学校で差が出たのが、男女混合名簿や「さん」付け呼称の導入など性別による区分の解消。(2)の設問で聞いた具体的な取り組みでは、自認する性別の服装や髪形を認めていた小学校は5割以上あったが、中学校は3割台だった。
本多准教授は「(小中学生は)自らの性的指向を認識し始める時期。性的マイノリティーの児童・生徒はいじめの対象や不登校になりやすい」と指摘している。【加古ななみ】

性的マイノリティーの児童・生徒に対する支援策の導入割合
            小学校  中学校
相談できる教職員がいる  79% 89%
性別による区分を避ける  74% 44%
教職員向けの研修会の実施 26% 21%
授業で取り上げる     19% 32%
教職員向けの手引の作成  15% 11%

【ことば】性的マイノリティー
性自認性的指向が多数派と異なる人たち。「LGBT」と称されるレズビアン(女性同性愛者)、ゲイ(男性同性愛者)、バイセクシュアル(両性愛者)、トランスジェンダー(体の性と性自認が異なる人)のほか、性自認が男性でも女性でもない「Xジェンダー」や、性自認性的指向が分からなかったり迷ったりしている「クエスチョニング」などがある。