首相、来年の国民投票も視野 自民党総裁選 改革の行方 - 東京新聞(2018年8月17日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201808/CK2018081702000150.html
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九月の自民党総裁選に立候補を予定する安倍晋三首相(党総裁)と石破茂元幹事長が、改憲について異なる立場から発信を繰り返し、大きな争点となっている。六十年以上の党の歴史で、改憲が争点の総裁選は異例。九条改憲にこだわる首相は二〇一九年中の国民投票も視野に、期限を区切って改憲を急(せ)かす姿勢を強めており、総裁選の結果次第では流れが一気に加速しかねない。
首相は今月十二日、山口県下関市での講演で「いつまでも議論だけを続けるわけにいかない」として「次の国会」への改憲原案提出を目指す考えを明言した。秋の臨時国会が念頭にあるとみられる。
首相は昨年五月、二〇年までの新憲法施行という目標を掲げたが、その後は「スケジュールありきでない」とも繰り返してきた。先の通常国会では政権を巡る不祥事が相次ぎ、改憲論議は停滞していただけに、あらためて具体的な時期に言及した今回の発言には驚きが広がっている。総裁選で公約して圧勝すれば、改憲論議が勢いを取り戻せるとの計算があるようだ。
自民党は一九五五年の結党以来、自主憲法制定が党是だが、総裁選で大きな争点になったことはない。
首相には祖父・岸信介元首相ができなかった九条改憲を自らの手で成し遂げたい思いが強い。二〇一五年十一月、保守系議連の会合で「憲法改正をはじめ、占領時代につくられたさまざまな仕組みを変えていこう」と訴えている。
このため首相は総裁選で連続三選されれば反対論を押し切り、改憲手続きを進めることも辞さない姿勢を見せる。具体的には臨時国会に原案を提出後、なるべく早く衆参両院本会議で三分の二以上の賛成を得て改憲案を発議。国民投票へと進めたい考えとみられる。下関市の講演では、改憲に前向きな日本維新の会との連携に向け、教育充実のための改憲にも言及した。
一方、石破氏は十六日のBS番組で、臨時国会での原案提出は「あり得ない」と首相をけん制した。石破氏は、改憲で優先すべきは参院選「合区」解消や緊急事態条項であり、九条改憲は「国民の深い理解が必要」と熟議を主張している。総裁選は首相が優位とされるが、石破氏が予想以上の支持を集めれば、九条改憲を急ぐ首相に疑問を突き付ける形になる。
総裁選立候補を目指す野田聖子総務相も「憲法を改正するなら土台からやらないといけない」として早期の改憲には慎重な立場だ。(山口哲人、金杉貴雄)

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改憲の行方を大きく左右する自民党総裁選。同党が今年三月にまとめた改憲四項目を軸に、首相や石破氏らの主張を整理する。