<つなぐ 戦後73年>僕らが語り継ぐ 「被爆者の方いなくなっても」 - 東京新聞(2018年8月6日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201808/CK2018080602000256.html
https://megalodon.jp/2018-0806-1820-32/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201808/CK2018080602000256.html

「いつか被爆者が一人もいなくなる」。平成最後の「原爆の日」を迎えた六日、酷暑の平和記念式典で、子どもたちは非核の思いを未来に引き継ぐと誓った。
「僕らが原爆の事実を受け継がないと、今まで被爆者の方が語ってきてくれた意味がなくなってしまう」。広島の子どもを代表し、平和記念式典で「平和への誓い」を宣言した広島市立五日市東小六年の米広優陽(よねひろゆうひ)君(12)は強い思いを胸に、平和記念公園から訴えた。
身内に被爆者はいないが、学校の平和学習などで何度も被爆体験を聞いてきた。印象深かったのは四年生の時に聴いた被爆者の坪井直(すなお)さん(93)の講演だ。
坪井さんは被爆後、助けに来たトラックが働けそうな大人の男性だけを乗せていき、乗りたそうだった女の子は置き去りにされた様子を語った。「戦争は助け合おうという大切な気持ちが失われる」と恐ろしさを感じた。
そんな中、テレビのニュースで被爆者の平均年齢が八十歳を超えていると聞いた。自分が二十二歳になったら九十歳、三十二歳の時には百歳を超える計算だ。「僕が大人になったとき被爆者の方が一人もいなくなるときが来るんだ」と実感した。
女の子の話をする坪井さんは涙を浮かべていた。被爆者の方がこうしてつらい話を伝えてくれてきたから、自分も当時の話を知ることができる。同じように将来誰かが語り継がないといけない。「戦争のことをもっと知りたい」と最近思うようになった。
子ども代表は多くの人に受け継ぐ大切さを訴えるチャンスだ。「学んで心に感じたことを、伝える伝承者になります」。暑い夏空の下、大きな声が響いた。