(教育ニュース)知識活用 改善見られず 全国学力テスト結果公表 - 東京新聞(2018年8月1日)


http://www.tokyo-np.co.jp/article/education/edu_national/CK2018080102100009.html
https://megalodon.jp/2018-0803-0910-19/www.tokyo-np.co.jp/article/education/edu_national/CK2018080102100009.html

文部科学省は三十一日、小学六年と中学三年の全員を対象に、四月に実施した二〇一八年度全国学力テストの結果を公表した。三年ぶりに行った理科では、実験結果の分析や得られた知見について説明するなどの活用力に課題があった。国語、算数・数学も知識活用型問題が苦手な点は改善しなかった。全体的に正答率の低い地域と全国平均の差は小さく、学力の底上げ傾向が続いた。 
同時に学校や子どもへのアンケートも実施。実生活と関連づけた理科授業を行うなど学校側が工夫を進めたにもかかわらず、児童生徒の興味関心はあまり高まりを見せていないことも分かった。
今回の理科は実験や観察過程を重視した出題で、結果の整理や分析はできていたが、それを踏まえ自分の考えを記述したり、条件を変えて実験を計画したりする段階に進むと正答率が低かった。
国語、算数・数学は主に知識を問うA問題と、活用型のB問題に分けて実施。小中ともに活用型の正答率の方が12・0〜19・0ポイント低く、苦手傾向は例年通りだった。知識問題は60〜70%台で安定し、定着傾向を見せた。
文科省は全国平均正答数を一〇〇と換算し、都道府県下位層との差をみた。理科は底上げが進み、下位三県の平均が小学校で三年前の九八・七から九九・〇に、中学校は九七・五から九八・五となった。国語や算数・数学も下位層と全国平均にあまり差がなかった。正答率の傾向もこれに連動する。
都道府県別の平均正答率(公立校)の上位は小中ともに秋田や石川、福井などが占める固定化が続いた。政令指定都市は所在道府県の他の地域より正答率が高いところが多かった。
国立教育政策研究所の担当者は「学力課題は全教科で共通している」と分析し、二〇年度以降の次期学習指導要領が重視する「思考力・判断力・表現力」にも関わるとして「授業改善を促したい」と述べた。
理科の正答率は小六が前回一五年度と同水準の60・4%、中三は13・0ポイントアップの66・5%。問題や受ける子が異なり過去と単純比較はできない。
学力テストは毎年の国語と算数・数学に加え、三年に一度理科を実施する。結果を二学期からの指導に生かせるよう今回から公表時期を一カ月前倒しした。

◆学校は「授業に工夫」でも…中学生理科離れ顕著に
今年度の全国学力テストで三年ぶりに実施された理科では、前回に引き続き、中学生での「理科離れ」の傾向が顕著となった。
理科は一二、一五年度以来三回目。意識調査で、新たに「授業で児童生徒の好奇心や意欲が喚起されるよう工夫していたか」と小中学校側に尋ねたところ、肯定的な回答は九割を超えた。
しかし、「理科の勉強は好きか」との問いに、肯定的に答えた割合は、小学生83・5%に対し、中学生は62・9%で、一五年度と同様20ポイント以上の開きがあった。
「理科の授業で学習したことは、将来、社会に出たときに役に立つか」との設問でも、肯定的な回答は中学生が小学生を16・9ポイントも下回った。
学力を試す設問では、中学三年で、植物が水蒸気を出す「蒸散」という働き以外に、植物が入った容器内の湿度を上げる原因を記述する問題で、「土から水分が蒸発した」などの正答率は平均19・8%と低かった。
自然現象の要因を抽出し、条件を制御した実験を計画することができていない傾向が見られた。
一方、下位三自治体の標準化得点(全国の平均正答数を一〇〇として計算した得点)の推移では、過去二回よりも理科の平均が上がっており、学力は底上げ傾向を示した。