辺野古問う県民投票 6万5千人の署名は重い - 琉球新報(2018年7月25日)

https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-768048.html
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名護市辺野古の新基地建設の是非を問う県民投票が実施される公算が大きくなった。「辺野古」県民投票の会が、2カ月の期限内に法定数を上回る6万5926人(22日午後9時現在)の署名を集めたからだ。
6万5千を超える署名には重みがある。翁長雄志知事や県議会はその点を十分に踏まえ、県民投票条例の制定に取り組んでもらいたい。
県民投票を実施するには投票の目的、投票者の資格などを定めた条例を制定しなければならない。県知事か議員が条例案を提案する以外に、住民が署名を集めて直接、知事に求める方法がある。
今回は、学生、弁護士、企業経営者らさまざまな立場の住民有志でつくる「辺野古」県民投票の会が5月23日から署名活動に乗り出した。
県民投票条例の制定を請求するには有権者の50分の1に当たる約2万3千人分の署名が必要だ。周到な準備を経て実施した1996年の県民投票に比べると、見切り発車の感もあった。
結果的に、動員力のある政党や団体が当初から積極的に取り組んだわけでもないのに、有権者の6%近くが署名している。「辺野古」県民投票の会が目標に掲げた11万5千人には届かなかったが、県民投票の実現を望む声が決して小さくはないことを示した。
県民投票の会は今後、各市町村選管に署名簿を提出する。不備がなければ条例制定を請求することになる。知事は請求から20日以内に県議会を招集し、条例案や関連予算案を提出する必要がある。県議会で多数を占める与党会派は県民投票を支持しており、条例は可決される見通しだ。
ただ、条例が制定されたとしても実際に実施されるかどうかは不透明な要素が残る。辺野古への新基地建設を推進する安倍政権に近い首長が協力しない可能性もあるからだ。県が市町村に投開票事務を強制することはできない。
県民投票は、米軍基地の整理縮小の是非を問うた96年以来、行われていない。今回は辺野古への新基地建設に対する民意を初めて全県的に問うものだ。
住民投票には代表民主制の短所を補う機能がある。法的拘束力がないとはいえ、基地建設に賛成する側、反対する側の双方にとって、県民の意向を直接確認する意味は大きいはずだ。手続きが順調に進めば、遅くとも来年4月ごろには県民投票が行われる。条例が制定されたあかつきには、全市町村が協力する態勢を取ってほしい。
96年の県民投票は投票率が59・53%で、米軍基地の整理縮小などへの賛成は89・09%だった。
実施される以上は、できるだけ多くの人が意思を示すことが大切だ。辺野古の埋め立て承認を撤回する知事判断の正当性にとどまらず、沖縄の基地問題の行方を大きく左右する機会になる。