(石垣 陸自受け入れ)議論は尽くされたのか - 沖縄タイムズ(2018年7月20日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/286324
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何を根拠に受け入れを判断したのか。最初から配備ありきの出来レースだったのではないか。疑問の晴れることのない唐突な発表となった。
石垣市平得大俣への陸上自衛隊の配備計画を巡り、中山義隆市長が18日の記者会見で、配備の受け入れを正式に表明した。配備への協力体制を構築し、国から用地取得や施設建設などで要請があれば、事務を進めることを庁議で確認。組織決定を後ろ盾に、受け入れ表明に踏み切った。
2016年12月に防衛省の諸手続きの開始を了承してから、「国防は国の専権事項」として、事実上受け入れを容認しながら、1年半も判断を明確にしてこなかった。
情報をオープンにし、市民との議論を深めることが首長の役割と強調していたが、配備予定地域での意見交換会を短兵急に設定し、住民らが一方的と反発する中で強行した。全市民を対象にした意見交換会も約200人と少なく、賛否が分かれて引き続き開催を求める声もあったが、十分に対応しなかった。
会見では「賛成反対の意見は議論を重ねて出尽くした」と結論づけ、反対する住民には「議論がかみあわない」と突き放すような言いぶりだった。果たして市民の声を傾聴し、議論を深めてきただろうか。配備が必要と考えるなら、その必要性を理解してもらう努力を尽くしただろうか。決してそうは思えない。
配備予定地域の反発は顧みず、防衛省側が進める手続きを認容して既成事実を重ねてきた。出来レースの1年半と批判されても仕方ない。

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中山氏は、国防や安全保障は「国の専権事項だから受け入れないとの判断は基本的にない」とも述べている。
仮に国の専権事項であったとしても、地域住民の意思を無視して、自衛隊施設の建設が許されていいわけはない。地域の理解を欠いた安全保障政策は必然的にぜい弱性を抱えた「砂上の楼閣」となる。
地方自治体の首長は、そこに住む人々の命や暮らし、民意、そして地域の長期的発展に責任を持ち、そのために権限が与えられている。
その首長である中山氏が、国の専権事項を理由に、「配備を受け入れないという判断はない」と語るのは、専権事項との言葉を前に、自身の責務に対する思考が停止していると言わざるを得ない。
地域住民の暮らしや将来への不安に対する配慮を欠き、国の施策に地域の実情を反映させない対応は、民主主義や地方自治の理念にももとる。

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石垣での陸自配備を含め、防衛省与那国島宮古島沖縄本島奄美大島での自衛隊配備を進め、島しょ防衛の強化を着々と進めている。
石垣や宮古での配備でもそうだが、防衛省は住民への情報開示が不十分なまま進めようとしている。
政府は配備・増強について「抑止力を高める」と強調する。だが、その一方で、安全保障のジレンマで、隣国との緊張を高める恐れもある。
不測の事態が起これば、被害を受けるのは住民である。住民との議論や理解がないまま推し進めてはならない。