<原発のない国へ 基本政策を問う>(3)石炭火力 新増設 時代に逆行 依存なお - 東京新聞(2018年7月16日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201807/CK2018071602000125.html
https://megalodon.jp/2018-0716-1025-59/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201807/CK2018071602000125.html


サッカーJリーグJEF(ジェフ)ユナイテッド市原・千葉の本拠地、千葉市沿岸のスタジアムの目と鼻の先に二〇一六年末、火力発電所の新設計画が持ち上がった。燃料は、石炭。建設に反対する元市議の小西由希子さん(59)が憤る。「粉じんの飛散が心配です。環境への影響も大きいのに、なぜ今さら石炭なのか…」
石炭火力の新増設計画が急増している。一一年三月の東京電力福島第一原発事故後、原発停止が続いたため、電力会社は需要を賄おうと石炭火力に頼った。
環境保護団体「気候ネットワーク」によると、既存の石炭火力は約百基だったが、一二年以降に約五十基の新増設計画が浮上。うち六基の計画が東京湾岸にあり、中部電や中国電、九電が出資する関連会社が名乗りを上げた。一六年から始まった電力小売り自由化に伴い、各社は大消費地の首都圏への進出を図る。
「価格が乱高下しやすい液化天然ガス(LNG)に比べ、石炭は価格も供給も安定している」。千葉市で石炭火力を計画する中国電出資の千葉パワーの広報担当者が強調した。
政府は、三〇年の発電量に占める石炭火力の割合を26%とする。一六年時点の32%から下げるものの、LNGと石油がさらに減るため、火力発電の中での石炭の比率はむしろ高まる。
石炭火力が多くなれば、地球温暖化の原因とされる二酸化炭素(CO2)の排出量が増える。石炭火力のCO2排出量は、高性能な設備でもLNGの二倍に上る。
政府の三〇年時点での目標は、一三年比で温室効果ガス26%減。だが、英国石油大手BPの統計で、日本の石炭消費量は一七年に四年ぶりに増えた。気候ネット東京事務所長の桃井貴子さん(45)は嘆く。「時代に逆行している。日本は世界から取り残されている」
一五年に採択された温暖化対策の世界的な枠組み「パリ協定」以降、脱石炭は最重要課題。フランスは二三年、英国は二五年をめどに石炭火力を全廃する方針で、脱原発を進めるドイツも、廃止時期を含む最終案を年内にまとめる。桃井さんは「日本の石炭火力の事業者は『ドイツは脱原発を進める分、脱石炭はできていない』と言い訳してきたが、理屈が成り立たなくなる」と指摘した。
国内の石炭火力の新増設計画は順調というわけではない。千葉県市原市内での新設を含めた七つの計画が「採算が採れない」などと中止に。仙台市では地元の反発を受け、事業者が木くずを固めた燃料(木質バイオマス)に換える。
海外では、多くの金融機関が石炭火力への投資から手を引き始めた。国内でも、三井住友銀行が低効率の石炭火力に融資しないことを表明。日本生命保険は全面的に投融資を停止するという。融資のハードルが上がれば、事業者は資金が調達できず、計画撤退につながるリスクが増す。
政府はパリ協定で求められるCO2削減の具体策を示せぬまま、石炭の活用を続けようとしている。 (内田淳二)
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