(女性自認学生受け入れ)権利保障へ重要な一歩 - 沖縄タイムズ(2018年7月12日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/282547
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東京のお茶の水女子大が、戸籍上は男性でも性別を女性と認識しているトランスジェンダーの学生を2020年度から受け入れると発表した。
これまで「女子」と規定してきた入試の出願資格を、「戸籍または性自認が女子」に改める。
大学側が説明するように「多様性を包摂する社会の対応としては当然」だが、トランスジェンダーの学生の受験機会の確保を出願資格に書き込んだ意義は小さくない。多様な性への理解がまた一つ広がった。
きっかけは数年前にあった当事者からの問い合わせという。学内にワーキンググループを立ち上げ、今年から施設整備などの準備に着手。新設する委員会では、受け入れに向けたガイドラインをつくる予定だ。
共学の場合、受験に障害はなく、多くの大学に当事者がいるとみられる。しかし女子大では受験資格自体が壁となり、支援の検討が後手に回ってきた。
日本学術会議は昨秋、性的マイノリティーの権利保障に関する提言で、トランスジェンダーの学生が望む大学に行けないのは「学ぶ権利の侵害になる」と指摘した。その上で「入学保障」などの課題に対応するためのガイドラインの策定を文部科学省に求めた。
既に米国では著名な女子大が入学資格を与えており、お茶大の国内初という今回の決定は、やっとという気持ちもある。
多様性を尊重する大きな流れが、慎重だった大学側の背中を押したのだろう。

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04年の性同一性障害特例法施行後、性の多様性を認め、「個」を尊重する取り組みが少しずつ広がった。
文科省は15年、性的少数者(LGBT)への学校でのきめ細かな対応を全国の教育委員会に通知。翌年には支援策をまとめた教職員向けパンフレットを配布している。
学校では、自認する性別の制服着用を認めるなどの配慮が進み、さらに性別に関係なくズボンとスカートを選べるようにする選択制の動きも出てきている。
お茶大の発表を受け、同大に通う学生から「いろんな人がキャンパスにいた方が面白い」など肯定的な意見が聞かれたのは、この間の取り組みの成果もあったのではないか。
特に当事者が学校に出向いて体験や思いを語る授業で、偏見や誤解がなくなり、理解を深めたという人は多い。

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欧米を中心に多様な生き方を容認する流れが加速する中、先進7カ国で同性婚やこれに準じた制度を法制化していないのは日本だけだ。
那覇市をはじめ全国7自治体が導入する「パートナーシップ宣誓制度」は、慎重姿勢の政府に代わって住民に近い自治体が同性カップルなどを公認する制度である。
電通の調査では、13人に1人がLGBTに該当していた。
教育現場はもちろん、学校を巣立った後の職場や生活する地域にも、当事者を支援する仕組みを広げていく必要がある。