育休延長目的 保育所「落選狙い」増加 落選通知必要と - 毎日新聞(2018年7月3日)

https://mainichi.jp/articles/20180703/k00/00m/040/191000c
http://archive.today/2018.07.03-001727/https://mainichi.jp/articles/20180703/k00/00m/040/191000c

大阪市など全国32自治体、国に制度改正を要望

大阪市など全国32自治体が、国に育児休業の制度改正を求めている。育休を延長する際には保育所の「落選」通知が必要なため、利用するつもりのない人が申し込む例の増加が目立ち、保育所利用のニーズ把握に障害が出ているためだ。内閣府は2日、地方分権改革の重点事項として対応を検討するよう厚生労働省に要請した。
育児・介護休業法は、子どもが1歳に達する日まで育休を取得できると規定。育休期間中は給与の50〜67%が育休給付金として雇用保険から支払われる。例外として、保育所に申し込んだが入れなかった人は、「落選」を伝える自治体の「入所保留通知書」があれば育休を延長できる。昨年10月から延長期間が半年から1年に拡大された。
育休期間の延長は、待機児童問題が長引く中で保護者が離職せずにすむようにとの救済策。だが、「2歳までは子どもと一緒にいたい」と望む人が、倍率の高い人気の保育所だけに申し込むなどして形式的に保留通知を取得するケースが表面化している。中には「落選目的」の人が内定してしまい、後に辞退するケースもあるという。
国は2020年度末までに待機児童ゼロの目標を掲げている。だが、落選目的の申し込みが相次いでいることを受け、大阪市など9自治体は6月、「正確な情報把握が困難で、待機児童対策をはじめとした国と自治体の保育施策全体をゆがめる恐れがある」として、今年の地方分権改革で、保留通知なしで育休延長できるよう国に制度改正を共同提案した。内閣府が手続きの一環で賛同を募ったところ、23自治体が同調した。
内閣府は月内に提案のとりまとめ役の大阪市からヒアリングを行い、その後、厚労省との折衝に着手し、年内に結論を出したい考えだ。ただ、厚労省内では「育休は原則1歳まででそれ以降は例外の措置。本当に保育所に入れなかった人を対象とするのが妥当」との声が根強く、提案に慎重姿勢を示している。【横田愛
「子どもの小さいうちは自宅で一緒に」ニーズが明らかに
 育休延長のために保育所の「入所保留通知書」を求めるケースはこれまでも水面下であると言われてきたが、複数の自治体関係者によると、育休期間を拡大した昨秋の制度改正を機に延長希望者が増えたという。
育休は雇用の継続を図るための制度で、保護者の希望だけで「無条件延長」を認めるには課題もある。
厚生労働相の諮問機関・労働政策審議会で延長期間を最長1年に拡大する議論をした際は、委員から「育休の長期化は企業の労務管理を難しくする」「女性の円滑な復職の妨げになる」と慎重意見が相次いだ。延長はあくまで保育所に入れない場合の「緊急的なセーフティーネット」と強調された経緯がある。
育休給付金は、育休で給与が支払われない間の減収の一部を補うものだ。従業員や企業の保険料が主な財源で「個人的な希望で育休を延長する人への支給が、社会的に受け入れられるのか」という指摘もある。
一方で、復職を延ばしてでも子どもの小さいうちは自宅で一緒にいたいという潜在的なニーズがあることも今回明らかになった。旧育児休業法の施行(1992年)以来、「原則1歳まで」の育休期間は変わっていないが、保護者のニーズも踏まえ多角的に議論を尽くす必要がある。【横田愛