動員された朝鮮人2600人の名簿存在 - 信濃毎日新聞(2018年6月22日)

http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20180622/KT180618FTI090052000.php
https://megalodon.jp/2018-0622-0945-53/www.shinmai.co.jp/news/nagano/20180622/KT180618FTI090052000.php

太平洋戦争中、松代大本営地下壕(長野市)など県内各地で労働に従事した朝鮮人の名簿が存在することが21日、分かった。戦時動員などで同地下壕建設に携わった朝鮮人が大半を占める2600人余の名前や住所、年齢などが記載されている。同地下壕建設の関係でこれほどまとまった人数の朝鮮人名簿が見つかったのは初めて。専門家は、名簿を基に本人や遺族をたどるなど調査を進めることで、当時の労働実態を明らかにできる可能性があるとみている。
国学院大(東京)の上山和雄名誉教授(71)=日本近現代史=が1990年代初頭に米国議会図書館で発見し、写しを取って保管していた。
名簿の多くは「帰鮮関係編纂(さん)」と記された史料の中にあった。敗戦直後に朝鮮人が帰国する際、工事事業者や警察署が作ったとみられる。同地下壕の工事を示す「東部軍マ(一〇・四)工事」を担当した建設会社西松組の松代出張所長名で県知事宛てに提出され、朝鮮人創氏改名後の名前と本籍地、渡日前の住所、年齢、生年月日を列記。性別、年齢から配偶者や子どもと推測される名前もある。
同時に見つかった「内鮮調査報告書類編冊」と記された史料には、県内の警察署ごとに朝鮮人の人数をまとめた「半島人輸送資料」と題した文書も含まれている。名前などは記されていないものの、帰国が見込まれる人がこの時点で計8千人以上いたことが記録されている。また、同地下壕や平岡ダム(下伊那郡天龍村)など少なくとも県内30カ所以上の工事現場別に帰国する人数をまとめた史料もあり、乗車する駅名や輸送責任者名なども示されている。
見つかった史料にはこのほか、県内で動員された中国人労働者が労働環境などについて記した手記や、第1次大戦後に日本の委任統治領になった南洋群島で動員された朝鮮人の史料なども含まれる。
朝鮮人強制連行」(岩波新書)などの著書がある東京大の外村大教授(52)=日本近現代史=は「朝鮮人を帰国させるための政策が地域レベルで広がっていた実態が分かり、全国的に貴重な史料だ」と指摘。この名簿を基に労働者本人やその家族、関係者らをたどることで、「動員時の未払い賃金などを新たに確認できる可能性がある。戦後補償の在り方を再考するきっかけになるかもしれない」としている。