4年後に成人年齢18歳 自覚高める教育の大切さ - 毎日新聞(2018年6月14日)

https://mainichi.jp/articles/20180614/ddm/005/070/127000c
http://archive.today/2018.06.14-013142/https://mainichi.jp/articles/20180614/ddm/005/070/127000c

明治時代から続いてきた成人の定義が変わることになった。
成人年齢を20歳から18歳に引き下げる改正民法参院本会議で、与党などの賛成多数で可決され、成立した。施行は2022年だ。
民法は、社会生活を送るうえでの基本的なルールを定めている。成人年齢の線引き変更は、18歳に選挙権が与えられた影響が大きい。
だが、そればかりではない。18歳は就職して社会に出たり、進学で親元を離れたりする時期である。社会の一員としての自覚が芽生える。
成人として権利を行使することを認める一方で、社会的責任を果たすことを求める−−。そうした考え方は自然だ。18歳成人の実現を前向きに受け止めたい。
ただし、国民の意識はそうなっていない。内閣府が行った世論調査では、18、19歳が親の同意なしに高額契約できることに対し、「反対」が8割近くに上った。今後、どう18歳成人を定着させるのかが問われる。
教育の果たす役割がまず重要だ。ニートや、社会への無力感など、若者を取り巻く環境を変えることが、先進国共通の課題になっている。
欧米では、学校教育で「シチズンシップ教育」の導入が進んでいる。政治や経済の仕組みを学習するだけでなく、市民としてどう参加していくのかを具体的に学ぶ。
日本でも、18歳選挙権の実現に伴い、政府は主権者教育の副読本を作製し、全国の高校に配布した。だが、授業の実施などは地域によって温度差が大きい。主権者教育を進めつつ、若者の社会参加を促すような教育についても、議論を深めたい。
国会審議では、日本維新の会を除く主な野党が反対に回った。親の同意のない未成年者の契約行為が取り消せる「未成年者取り消し権」の対象から18、19歳が外れ、消費者被害の拡大が懸念されるからだ。
消費者庁は小冊子を作製し、高校での授業を今後全国で実施していく。悪質商法の標的にならぬよう消費者教育の充実が欠かせない。
成人式をいつ実施するのか、親権が及ばない生徒に対する学校の指導はどうするのか。改正法に伴う検討課題は多岐にわたる。政府は省庁横断の連絡会議で議論していく。社会全体で準備を進める必要がある。