(県民投票と承認撤回)相乗効果を生む工夫を - 沖縄タイムズ(2018年6月4日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/261742
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名護市辺野古の新基地建設の是非を問う県民投票を巡って、慎重な姿勢を示してきた県政与党の社民、社大、共産の3党が、相次いで「『辺野古』県民投票の会」(元山仁士郎代表)への協力を表明した。
県民投票については、埋め立て工事を止める上での有効性などを巡って、新基地建設に反対する市民の中にも大きな意見の違いがある。
土砂の本格投入に合わせ埋め立て承認の撤回を優先すべきだと主張する人たちと、県民投票による民意に活路を見出そうとする人たちの溝は、埋まっていない。
そんな中で、県民投票の会が5月23日、署名集めの開始を告げるキックオフ会議を開き、活動を本格化させたのである。
ここに来て与党が県民投票に前向きな姿勢を示すようになったのは、秋の知事選を控え、これ以上、内部の亀裂を広げてはならない、との危機感があったからだ。
県民投票は知事選や知事の埋め立て承認と深く関係している。
翁長雄志知事はこれまで、承認撤回を「必ずやる」と明確に語ってきた。撤回は、法的に残された最大の対抗手段である。
今後、焦点になるのは、撤回と県民投票を、いつどのような形で、どういう理由で実施するか、という点だ。
「知事頼み」といわれてきた与党が、どのように指導力を発揮し、翁長知事を支えて新たな展望を切り開いていくか。そのことが問われる新たな局面を迎えた。

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政府が最も重視し、天王山と位置付けているのは、知事選である。
知事は、埋め立て承認の撤回以外にも、設計概要変更申請の承認権などの権限を持っている。
知事選に勝って、新たな知事に設計概要の変更を次々に申請し、埋め立て工事を一気に進める。それが政府の考えだ。護岸工事を急いでいるのは知事選を有利にするための環境づくりという側面が大きい。
新基地容認派の候補が当選すれば、県民投票で反対が過半数を占めても、法的な拘束力がないことを理由に政府は間違いなく無視するだろう。
一方、知事が再選を果たし、県民投票でも辺野古反対が過半数を占める結果になれば、政治的な影響は計り知れない。撤回を後押しすることにもなる。県民投票はいわば「諸刃の剣」だといえる。

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政府は早ければこの夏にも、埋め立て予定海域に土砂を投入する見通しである。この段階で手をこまねいていれば、知事は反対派の市民から「公約違反」を問われることになるだろう。
県民投票の結果をみてそのあとに撤回を実行するというのでは、反対派市民や自然保護団体の理解は得られない。
なぜ、撤回をするのか。知事選とは別に、県民投票を実施するのはなぜか。
その理由を丁寧に説明するとともに、東アジアの激変を念頭に新たな基地政策を打ち出し、沖縄が目指す未来像を明確に示すこと、が重要だ。