籠池被告"10か月"ぶり保釈 長期勾留は裁判所の忖度?日本の"人質司法"とは - AbemaTIMES(2018年5月28日)

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補助金詐欺事件で10か月にわたって勾留されていた森友学園の前理事長・籠池泰典被告と妻の諄子被告が保釈された。
25日午後5時過ぎ、スーツ姿で拘置所を後にした籠池被告は、妻の出所を待つかのように拘置所内を見つめていたが、やがて促されて車内に乗り込んだ。続いて姿を現した諄子被告は深々と拘置所に向けて頭を下げ、夫の待つ車へと向かっていった。そして2人は会見が開かれる大阪弁護士会館へと向かった。
■話題を振りまいてきた夫妻
籠池被告らが公の舞台に出るきっかけとなったのは、2016年、大阪府豊中市にあった鑑定価格9億5600万円の国有地が、1億3400万円で森友学園に売却されたとする問題だ。この売却に安倍総理が関わっていたのではないかという疑惑が浮上、昨年3月、当時森友学園の理事長だった籠池被告が証人喚問に呼ばれることになった。
元々昭恵夫人と親交が深かったという籠池被告は、学校の名前を「安倍晋三記念小学校」とし、名誉校長に昭恵夫人を招こうとしていたと報じられた。
「この問題が国会で議論されるようになってから、私の妻のところに昭恵夫人から"ご夫妻が今大変なことは想像つきますが、主人にとっても大変なことに巻き込まれたということもご理解いただきたいと思います"とか、"私がかかわったということは裏で何かがあるのではと疑われないように"という口止めともとれるメールが届いた」などと証言した。
一方の安倍総理は、土地売却について自身と妻の関与を真っ向から否定。しかし、籠池被告は総理から昭恵夫人を通して100万円の寄付を受けたと主張、100万円を返却すべく上京してみせこともあった。ただ、カメラの前で見せた100万円の束は、白い紙だった。
籠池被告は昨年の都議選でも安倍総理の応援演説に突然姿を現し、「国政の責任者がきちんと説明責任を果たしていないなあと思って、お邪魔して聞かせてもらおうかなと思った。できたら100万円もお渡ししたい」と語った。妻の諄子被告も、演説する安倍総理に「携帯電話も返せー!財布も返せー!人殺しー!ドロボー!お父さんは詐欺師じゃない!逮捕してみろ!殺してやる!」と恨みをぶつけていた。
そして、7月31日、小学校の建設に対して支給される補助金約5600万円を騙し取った疑いと、運営する幼稚園で勤務実態のない職員や特別支援園児の数を水増しするなどして補助金を不正受給した疑いで逮捕されることになった。不正額は、計1億7620万円にのぼっていた。「日本の夏、セミの声、今静かにして、木の下に宿れるなり。我が心、その宿れるなりと同じき安き心にある。いってきます」と玄関を出る籠池被告に、諄子被告「お父さん、かっこいい」と言葉をかけていた。
■異例の長期勾留、背景は
保釈にあたっての会見で「早朝の志を得る初夏の風」と一句詠み、「これから活躍させてもらいます」と、変わらぬキャラクターをアピールした籠池被告。勾留については「国策だと認識しており、妻については全くの冤罪だ。民主主義国家の日本では考えられない」と主張、大阪府からの告訴に関しても「維新の党のカモフラージュ。松井府知事の政治的カモフラージュのために警察と示し合わせたもので、国民を欺いている」とした。
さらに国会の証人喚問の内容に関しては「虚偽はない」と明言。「(小学校の建設は)諦めていない。吉田松陰の心をもって進む」と話した。
23日に公開された財務省の文書からは、籠池被告が価格交渉に際し電話や面談で繰り返し減額を要求、「学校は公益目的なのに賃料が高すぎる」「あんたらいじわるや、死んだら地獄に行くぞ」など、非常に強硬な姿勢を示していたことがうかがえる。
さらに、諄子被告が近畿財務局職員に「お前なんか信用できない」とコースターを投げつけたことも記されているが、諄子被告は会見で「コースターはなかった」と主張した。
一方、籠池被告は10か月の間に情報が遮断されており、現況を把握していないなどとして森友問題・詐欺事件についてはコメントできないとも述べた。
監獄訴訟を手がけるなど、人権問題に詳しい海渡雄一弁護士は、「本来、未決の場合は受け取れるが、裁判所が接見禁止処分にして信書のやり取りも禁止し、非常に密室度が高い状態に置かれていたと思う。新聞やテレビも見ておらず、情報に追いついていないということも言っていたので拘禁生活が大変だったんだなと感じた。手紙のやり取りもできず、友人とも面会できない状態だったので、状況がうまく掴めていないのだろう。裁判の時までに意見をまとめたいと受け取れる発言だった。人間の口封じをしたい時に勾留して喋れない状態におくということが、日本の捜査では時々行われてきた」と話す。
証券取引法違反で逮捕され、東京拘置所で約3か月拘禁された堀江貴文氏は、後に「弁護士以外誰とも話ができず隔離されていたのもキツかった」と振り返っている。また、会社法(特別背任)違反で逮捕された元大王製紙の井川意高氏は東京拘置所に約1か月拘禁された。井川氏も「少しばかり生活規則が厳しい林間学校のようなものだった」としている。
通常の起訴の場合、最初の勾留は2か月間で、その後は1か月ごとに更新されるケースが多いという。今回の10か月の勾留にはどのような意味があるのだろうか。
海渡弁護士は「裁判が始まるまでに時間がかかるケース、罪状認否がはっきりしないようなケースでは勾留が長引くが、それ自体が日本の刑事司法の問題点だと国際的にも非難されている。籠池被告の場合、検察側が記者会見などで色々喋ってほしくないと思っていることを裁判所側が忖度したのではないか」と指摘。
裁判所が「証拠隠滅の恐れがある」として保釈を許可しなかったことについても「勾留というのは、基本的に逃走を防止するため。日本の場合、罪状認否で罪を認めるまで、なかなか保釈されない。証拠隠滅を理由に勾留を長く続けるという制度自体、アメリカやヨーロッパにはない。アメリカでは逮捕翌日に保釈金を積んだ殺人犯が出てくる」と説明した。
また、「森友問題は、籠池被告が騙したという事件だけでなく、国の方が安倍案件だとして便宜を図ったという背任事件としても捜査されている。その部分が有耶無耶になってしまって、捜査が不足しているのではないかという印象を受ける」とも指摘していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)