<金口木舌>権力者を支える自発的隷従 - 琉球新報(2018年5月26日)

https://ryukyushimpo.jp/column/entry-726264.html
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アメリカンフットボールの反則問題で当事者が会見した。関西学院大クオーターバック(QB)を負傷させた日大の選手が内田正人前監督とコーチの指示があったと明言した

▼「相手のQBを1プレー目でつぶせば(試合に)出してやる」との指示に従い、卑劣な行為に走ってしまった。事実なら、監督は試合に出たいと切望する選手を利用したことになる
▼出場選手を決める権限のある内田氏は、反則行為の指示を否定したが「試合で行っていることは私の責任だ」と監督を辞した。一方、不正の責任を認めながら、権力の座に居座る人もいる
安倍晋三首相は森友学園に関する決裁文書の書き換えについて「最終的な責任は私にある」と陳謝した。財務省理財局長だった佐川宣寿氏は証人喚問で訴追の恐れがあることを理由に証言を拒否したため、真相解明には至っていない
▼フランスの人文主義者、エティエンヌ・ド・ラ・ボエシは著書「自発的隷従論」で「圧制者が人々を害することができるのは、皆がそれを好んで耐え忍んでいるからだ」と指摘した。権力者の意図を酌み、隷従することが彼らを助長させる
▼日大の選手は「事実を明らかにすることが償いの第一歩」と述べた。権力にとって都合の悪い事実をつまびらかにするのは勇気のいることだ。
民主国家の奉仕者である官僚に、学生の勇気はどう映っただろうか。