<金口木舌>スターと原爆 - 琉球新報(2018年5月20日)

https://ryukyushimpo.jp/column/entry-722327.html
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若い世代には、アニメ「ちびまる子ちゃん」の姉が好きなアイドルとして、なじみ深いようだ。その歌謡界を代表するスター西城秀樹さんが16日亡くなった

▼西城さんと言えば「YOUNG MAN」。元は米国のグループの楽曲だが、1978年、米滞在中に耳にして「歌いたい」と名乗りを挙げた。日本人ソロ歌手では初めてスタジアムでコンサートを開いたように、革新的な歌い手でもあった
▼出身地、広島県とのつながりではアニメ映画への声優出演が挙げられる。「はだしのゲン」で知られる漫画家の故中沢啓治さん原作「黒い雨にうたれて」(84年公開)だ
▼この作品は原爆症に加え、世間からの偏見や無理解に苦しむ被爆者の姿を描く。原作では主人公の一人が「沖縄核基地化進む 核弾道メースB」という新聞報道を見て、ぼうぜんとする姿も描かれる
▼出演理由は分からないが、原爆や戦争への怒りが前面に出た映画に、人気絶頂期の歌手が出演した事実は被爆者に勇気を与えただろう。脳梗塞で2回倒れたが、右半身にまひが残った状態でマイクを握った。若い頃の情熱的なパフォーマンスと同様、その姿は感動を与えた
▼甲子園では今も「YOUNG MAN」が応援歌として球児たちを鼓舞する。その特徴的なハスキーボイスと全身で表現した「君も元気出せよ」のメッセージは多くの人を励まし続ける。