(筆洗)科学者と戦争協力、科学技術の軍事利用 - 東京新聞(2018年5月19日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2018051902000154.html
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日本が三つの国に分かれて戦争を始めてしまった時代、若い天才物理学者は衝撃を受ける。兵器に使われているのが、彼の開発した技術だったからだ。
科学者と戦争協力、科学技術の軍事利用という重いテーマを扱ったこの物語。大人だけに向けたフィクションではない。放送中の「仮面ライダー」シリーズの最新作だ。
評判を聞いて、見ている。おなじみの変身や特撮ヒーローらしい派手な戦闘シーンもふんだんにある。その一方で、ライダーに変身する天才物理学者は悩み、科学の役割は、「過ちを繰り返さないため」にあると決意する。
現実はどうだろう。世界で軍事用ロボットやドローンなどの開発が目覚ましい。人工知能が操り、敵を殺傷する兵器の登場も近いという。
ロボット兵器開発には、国境を超えて研究者たちが反対の声を上げ始めた。京大は先日、平和を脅かす軍事研究をしない基本方針を明らかにしている。ただ軍事研究との関わり方には、制度化に苦慮する大学も多い。ロボットのように、民間用と軍用の技術の線引きが難しいという事情もあるだろう。
一月に発表された調査によると、男の子のなりたい職業一位は「学者・博士」だそうだ。特撮のヒーローが科学と軍事の問題に悩んでも不思議でない時代ということか。科学の在り方に悩むヒーローの決意もまた軽く見てはいけない時代ではないだろうか。