(筆洗)ここまで世間を騒がせても支持率増とは - 東京新聞(2018年5月15日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2018051502000115.html
https://megalodon.jp/2018-0515-0934-43/www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2018051502000115.html

「犬が西向きゃ尾は東」「北に近けりゃ南に遠い」−。いずれも言うまでもないこと、あたりまえであることをたとえる古い言い回しである。
分かりきったことを臆面もなく主張する者への当て付けの言葉。まだまだある。「ニワトリは裸足(はだし)」「親父(おやじ)は俺より年が上」「雨の降る日は天気が悪い」…
シッポの大きく曲がった犬や足下駄(あしげた)をはいたニワトリが浮かぶ。何かといえば、内閣支持率である。
安倍政権の支持率は先月の調査から1・9ポイント増の38・9%。不支持(50・3%)が上回っているが、加計学園獣医学部新設問題などで厳しく批判されながら、下がるどころか上昇している。
一連の問題を世間が許しているわけではないことは同じ調査結果を見れば分かる。加計学園をめぐる元首相秘書官の国会答弁に対し、「納得できない」の回答は75・5%。獣医学部新設を認可した政府のやり方を不適切だったと考える人も約七割である。この問題だけで支持率が左右されるわけではないのは承知しているが、ここまで世間を騒がせても支持率増とは「雨の降る日も天気は良い」か。
景気は悪くない。世間には疑わしきことや不届きな言動に目をつぶってでも安倍政権を支持したい空気があることは理解するとしても、「政治家が怪しげなことをすれば、支持を失う」のあたりまえの判断がしにくい日本の政治の現状は寂しい。