(大弦小弦)何度読んだだろう。愛嬌(あいきょう)たっぷりで… - 沖縄タイムズ(2018年5月9日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/249081
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何度読んだだろう。愛嬌(あいきょう)たっぷりで無邪気で素直な「だるまちゃん」は、たくさんの友達と出会い、遊び、いろいろな局面を乗り切る。絵本から醸し出される温かい雰囲気とメッセージが心地よく響く

▼2日、92歳で亡くなった絵本作家の加古里子(さとし)さんの代表作でもある「だるまちゃん」シリーズ。長く愛されてきた作品の根底には、未来を担う子どもたちへの並々ならぬ思いや期待がある

▼加古さんは19歳で敗戦を迎えた。幼い頃、軍人になり国に尽くそうと思ったが、視力が悪くなれなかった。敗戦後、態度が急変した大人に失望し、自らの判断を悔いた。子どもたちに「後悔しない人生を送るよう伝えたい」と絵本や遊びを通して活動に入る

▼今でいうボランティアで子ども支援の活動に携わり、子どもたちの発想力や個性、秘められた多くの可能性を見いだす。遊びの中で命を充足させる子どもたちの姿から大切なことを全て教わったという

▼だからこそ思いを託す。「生きることをうんと喜んでいてほしい。世界に目を見開いて理解して。生きる場所がよりよいものになるために力をつけて」と

東日本大震災の被災県や米軍基地があり続ける沖縄に思いを込めた作品も手掛けた。常に次世代がよりよくなるためにとのメッセージを今こそ大人がしっかりと受けとめなくては。(赤嶺由紀子)