言わねばならないこと(109)9条改憲は若者の問題 憲法学者・九州大教授 南野森さん - 東京新聞(2018年5月2日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/himitsuhogo/iwaneba/list/CK2018050202000189.html
https://megalodon.jp/2018-0502-1552-31/www.tokyo-np.co.jp/article/feature/himitsuhogo/iwaneba/list/CK2018050202000189.html

憲法自衛隊の存在をその権限や任務が変わらないように書き込むことは相当に難しい。その難しさを安倍晋三首相や自民党は理解しているのだろうか。
九条の二に「必要な自衛の措置」をとるための実力組織として「自衛隊」を明記する自民案では、自衛隊を「必要最小限度」の実力組織としてきた従来の政府解釈との関係が不明瞭で、将来自衛隊が相当強大化しても合憲と主張され得る。
九条二項が維持される以上、自衛隊違憲論争に決着をつけることにもならない。自衛隊は今と何も変わらないから安心だ、違憲論争に終止符を打てるから有意義だ、という首相の説明と自民案は適合しない。
憲法の眼目は軍事力や行政権を縛ること。首相と自民党は九条や緊急事態条項でそこをいじろうとしている。九条では党内外の議論の積み重ねを無視して、全然違う案をポンと出し、翌年には発議すると。そんなに軽く扱う条文ではない。
首相自身は自衛隊の権限や性質を変えようとは考えていないのかもしれない。だが将来いつ独裁的な政権ができるか分からない。十年後の日本社会が今では想像さえできない状況になる可能性もある。現政権を支持しているからというだけで賛成してよい問題ではない。将来の日本社会の命運を左右するという意味で、九条改憲若い人たちこそが考えるべき問題だ。
改憲は国会が発議し、国民が投票で決める。国民投票有権者憲法を理解してもらうため、憲法学者が何をすべきか考えるようになった。関心がない人にどう関心を持ってもらうかは永遠の課題。憲法は自分たちの生き死にや将来世代の生活にかかわることを、いろんな機会に少しずつ伝えていくしかない。

<みなみの・しげる> 京都府生まれ。東京大大学院法学政治学研究科博士課程、パリ第10大大学院博士課程を経て、2002年に九州大准教授、14年から現職。主な著書に元AKB48の内山奈月さんと共著の「憲法主義〜条文には書かれていない本質」など。