憲法改正 賛否はきっ抗 NHK世論調査 - NHK(20185月1日)

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180501/k10011424521000.html

3日は憲法記念日です。NHKの世論調査で、今の憲法を改正する必要があると思うか聞いたところ、「改正する必要があると思う」が29%、「改正する必要はないと思う」が27%と賛否がきっ抗し、「どちらともいえない」が39%となりました。
調査概要
NHKは、先月13日から3日間、コンピューターで無作為に発生させた電話番号に電話をかけるRDDという方法で世論調査を行い、全国の18歳以上の男女3480人のうち54.3%にあたる1891人から回答を得ました。今回はこれまでの固定電話だけでなく、新たに携帯電話の番号も調査に加えています。
憲法改正の是非
最初に、今の憲法を改正する必要があると思いますか改正する必要はないと思いますかと聞きました。「改正する必要があると思う」が29%、「改正する必要はないと思う」が27%と賛否がきっ抗し、「どちらともいえない」が39%となりました。
2016年との比較
NHKはおととしの調査でも同じ質問をしています。今回と調査方法が違うため単純な比較はできませんが、改正する必要があると思うが27%、改正する必要はないと思うが31%、どちらともいえないが38%でした。
年代別
「改正する必要があると思う」と答えた人を年代別にみると、最も多かったのが40代でその割合は38%、最も少なかったのは18歳から29歳で17%でした。
一方、「改正する必要がない」と答えた人を年代別にみると、最も多かったのは70歳以上で35%、最も少なかったのは30代で13%でした。
改正賛否の理由
次に、「改正の必要があると思う」と答えた人にその理由を聞きました。「憲法が今の時代に合わなくなってきているから」が54%と最も多く、「国の自衛権自衛隊の存在を明確にすべきだから」が32%、「アメリカに押しつけられた憲法だから」が5%、「プライバシー権など、個人の新たな権利を盛り込むべきだから」が4%となっています。
一方、「改正する必要はないと思う」と答えた人に理由を聞いたところ、「戦争の放棄を定めた憲法9条を守りたいから」が64%と最も多く、「憲法改正より優先して取り組むべき課題があるから」が17%、「すでに国民の中に定着しているから」が10%、「アジア各国などとの国際関係を損なうから」が4%となっています。
自衛隊明記の賛否
自民党憲法9条自衛隊を明記する考え方を示しています。憲法を改正して自衛隊の存在を9条に明記することについて賛成か反対か尋ねました。「賛成」が31%、「反対」が23%、「どちらともいえない」が40%でした。
憲法9条の評価
戦争を放棄し、戦力をもたないことを定める憲法9条をどう評価するかを尋ねたところ、「非常に評価する」が28%、「ある程度評価する」が42%で、合わせて70%でした。一方、「あまり評価しない」が18%、「まったく評価しない」が7%でした。
いま憲法改正進めるべきか
安倍総理大臣が憲法改正に意欲を示す中、いま、憲法改正の議論を進めるべきだと思いますか、それとも、憲法以外の問題に優先して取り組むべきだと思いますかと聞きました。「憲法改正の議論を進めるべき」が19%、「憲法以外の問題に優先して取り組むべき」が68%でした。
改憲が必要との問題意識は共有されていない」
今は憲法を変えるべきではないという立場の東京大学石川健治教授は、「多くの国民にとって、優先すべきは景気をどうするかとか、株価がどうかといった経済だ。どうしても改憲が必要だという問題意識が共有されていないことは、今回の調査でも明らかだ。憲法改正のような大きな問題がごく限られた人の強い問題意識や関心に引きずられてしまう状況の中で改憲を議論すべきではない。しかも、政治不信が高まっている現在のような政治構造のもとで憲法改正をするのはふさわしくないと思う」と指摘しています。
自民党が目指している憲法9条自衛隊の存在を明記する改正案については、「日本国憲法のあらゆる組織なり権限は明記するだけでできあがっているのではなくて権限を明記したら必ずそれに対抗する、コントロールを用意するという仕組みでできている。ところが、今回は自衛権自衛隊を明記することに代わるコントロールがない。自衛隊明記はそれを外す提案なので、それが何をもたらすか、体系的な説明が必要だ」と話しています。
憲法の改正が必要という人は一定数いる
憲法について、改正に向けた議論を進めるべきだという立場の九州大学の井上武史准教授は、「憲法の改正が必要という人は一定数いて、必要ないという人より多少、多い状態が続いている。改憲イコール悪ではなく、社会を今よりよくしようという観点で、改憲に向けて、ふだんから『ここはよい』『ここは悪い』と、議論していくことが必要だ。改憲論議をやるとしたら、できるだけ政治家は多くの合意を集め、必要性を粘り強く説明して訴えかけることが必要だ」と指摘しました。
自民党が目指している憲法9条自衛隊の存在を明記する改正案については、「自衛隊については憲法違反という疑いがずっと向けられてきて、現に憲法学説とか学校の教科書でも憲法違反の疑いがあると書かれているのは事実だ。存在を明記することで憲法上の根拠を与え、論争を解消しようというのは、改憲の理由に十分なると思う。憲法の文言だけを見ると自衛隊の存在がどうやって正当化されるのかわからない。自衛隊をきちんと憲法に書くことで立憲主義の観点から正当化できる」と述べました。