幹部自衛官、野党議員に罵声 問われる文民統制 - 東京新聞(2018年4月18日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201804/CK2018041802000121.html
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防衛省統合幕僚監部指揮通信システム部に所属する三十代の男性三等空佐が十六日夜、国会近くの路上で、民進党小西洋之参院議員に向かって「おまえは国民の敵だ」と罵声を浴びせていたことが分かった。陸上自衛隊イラク派遣時の日報問題を巡る混乱が続く中、シビリアンコントロール文民統制)のあり方が問われる不祥事が再び起きた。識者は「戦前の軍隊のようだ」と批判している。 (佐藤圭、荘加卓嗣)
◆統幕長が謝罪、処分検討
十六日午後九時ごろ、三佐が国会周辺をランニング中、参院議員会館付近の路上で小西氏と偶然遭遇。小西氏によると、三佐は約十五分間、「おまえは国民の敵だ」「おまえの議員活動は気持ち悪い」などとののしったという。近くにいた複数の警察官が駆け付けた後も同様の発言を繰り返し、小西氏が制止してもやめなかった。小西氏がその場から防衛省の人事担当者に電話で連絡したところ、最終的に発言を撤回した。
小西氏は十七日の参院外交防衛委員会で「自衛隊員として許されない」と防衛省に事実関係の調査を要求。小野寺五典防衛相は「適正に対応する」と応じた。
統幕トップの河野(かわの)克俊統合幕僚長は同日、小西氏に謝罪。三佐について本紙の取材に「私の所に報告にも来るが、大変まじめな幹部自衛官」と評した。防衛省は「不適切な発言で、暴言とも受け止められかねない」として詳しいやりとりを調べており、処分などの対応を検討する。
小西氏は国会でイラク派遣日報問題を連日取り上げていた。取材に「自衛官が国会議員に暴言を吐くとは空前絶後の大事件で身の毛がよだつ。河野統幕長は即刻辞任すべきだ」とした。
イラク派遣日報問題で批判の矢面に立たされている防衛省自衛隊内では不満がくすぶっている。陸自中央の佐官は、罵声を浴びせた三佐を「ばかなことをしてくれた」と切り捨てる一方、自衛隊の現状について「日報の探索の指示が不明確だったり、時間がない中で探索に追われている。隠蔽(いんぺい)と言われ続けることには憤りをずっと感じている」と漏らした。
統幕は陸海空各自衛隊から選抜された幹部を中心に構成され、指揮通信システム部は三自衛隊の統合運用の見地から、指揮通信の計画などを担当する部署。三佐は中級幹部に当たり、三自衛隊合わせて一万人いる。
◆戦前の軍隊思わせる
昭和史に詳しい作家の半藤一利さんの話 何を考えているのか。一九三八年に衆院国家総動員法の審議中、説明員の佐藤賢了(けんりょう)・陸軍中佐(当時)が、議員に「黙れ」と一喝した件があったが、当時を思わせる。国会議員は曲がりなりにも国民が選んだ選良で、それを敵だと言うのは選んだ国民を「敵だ」と言うのと同じこと。イラク派遣部隊の日報の問題を見ても、あるものをないと言ったり、首相や防衛相ら自衛隊を統制する側の文民も、される側の自衛官も、それぞれの自覚が無く、シビリアンコントロールや民主主義の形が分かっていないのではないか。