内閣府が助言「加計ありき」より濃く - 東京新聞(2018年4月11日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018041102000149.html
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加計学園獣医学部新設をめぐり、内閣府幹部が自ら学園側に「国家戦略特区の手法を使いたい」と提案していたのは「加計ありき」を如実に物語るものだ。「優遇」疑惑は一段と深まった。
このような出来レースまがいの行為が行われていたのでは「行政手続きがゆがめられた」(前川喜平・前文部科学省事務次官)との批判に、反論などできるはずはあるまい。
今回、焦点が当たった国家戦略特区は、国主導、トップダウンでテーマや地域が決まるため、これまでも恣意(しい)性や不透明さが指摘されていたものだ。
小泉政権が導入した構造改革特区や菅政権の総合特区が、自治体側の規制緩和要望を受けて検討するのとは対照的である。
愛媛県今治市は二〇〇七年から一四年まで計十五回、構造改革特区で獣医学部開設を申請したが、毎回却下されていた。
それが国家戦略特区になった途端、認められた格好である。その裏で、実は国家戦略特区を所管する内閣府の幹部が具体的なアドバイスを含めて戦略特区申請を提案していたというのである。
政府関係者によれば、一五年四月に学校法人「加計学園」や愛媛県今治市の担当者が内閣府で特区事業を担当する藤原豊・内閣府地方創生推進室次長(当時)と面談。藤原氏は「要請の内容は総理官邸からと聞いている」と発言したとされる。
続いて一行は柳瀬唯夫・首相秘書官(当時)とも面会し、その際の記録文書の存在も明るみに出た。それには安倍晋三首相の秘書官が「本件は、首相案件」と語ったとの記載がある。昨年五月に文科省から流出した文書の「(早期開学は)総理のご意向」との内容と符合するものである。
柳瀬氏は新設に反対する日本獣医師会への対策や国家戦略特区でのカリキュラムの工夫といったことも指南した。これでは受験生にあらかじめ解答を教えるようなもので、出来レースもいいとこだ。
新たにこれだけ疑惑の材料が加わった。それでも首相は「(獣医学部新設に)私が関与したと言った人は一人もいない」との言い逃れを続けるのか。四十年来の友人である加計孝太郎・理事長を優遇する意向は本当になかったといえるのか。
疑惑の解明には加計氏らの国会での証人喚問しかない。それを実現するのは首相をおいていない。逃げていては終わらないのだ。