「かなりチャンスある」 藤原氏 今治市などに助言 - 東京新聞(2018年4月10日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201804/CK2018041002000142.html
http://archive.today/2018.04.10-003618/http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201804/CK2018041002000142.html

愛媛県今治市に今月開学した学校法人「加計(かけ)学園」の獣医学部をめぐり、内閣府の幹部が二〇一五年春、安倍首相肝いりの国家戦略特区を活用するアイデアを県や市の幹部に伝えていたことが明らかになった。特区が認められる一年半以上も前のことで、幹部はその際、「かなりチャンスがあると思っていただいてよい」とも述べたという。半世紀ぶりの獣医学部新設が当初から「加計学園ありき」だった疑いは、この発言からも浮かび上がる。
一五年四月二日。県の地域政策課長や市企画課長、学園の事務局長らは、内閣府で特区を担当していた藤原豊・地方創生推進室次長を訪ねた。
「要請の内容は総理官邸から聞いている。県や市がこれまで構造改革特区を申請してきたことも承知している」。政府関係者によると、藤原氏はそう切り出したという。
若者の人口流出を食い止めようと、大学誘致を長年掲げてきた今治市。市の構想に手を挙げたのが加計学園だった。県と市は構造改革特区で加計学園獣医学部を新設しようと提案し続けたが、実現しなかった。獣医師の増えすぎを避けようと、文科省が学部新設を認めてこなかったからだ。
面会の際、藤原氏が打開策として強調したとされるのが、安倍政権の目玉政策として一三年に導入された国家戦略特区。特定の地域を限定して大胆な規制緩和を行う制度だ。構造改革特区に比べ、事業を決定する国家戦略特区諮問会議の議長を務める首相の意向が反映されやすい。
藤原氏は制度の概要を説明した後、提案書の内容にも言及。学部新設に反対する日本獣医師会を意識し、「ペット獣医師を増やさないような卒業後の見通しをしっかり書き込んでほしい」とアドバイスしたという。
「かなりチャンスがあると思っていい」。お墨付きを与えるような発言が出たとされる面会を境に状況は一変。国家戦略特区諮問会議は翌一六年十一月、獣医学部新設の方針を決定。一七年一月に唯一応募した加計学園が事業者に選ばれ、系列の岡山理科大獣医学部として今月開学した。
ある内閣府の職員は「藤原さんは特区に詳しい。国家戦略特区ができて内閣府に呼ばれたのは、官邸から特区の手腕を買われていたから。官邸とのパイプも太かった」と証言する。
政府関係者は「『加計ありき』のストーリーを書いたのは官邸。政治の私物化だ。官邸主導で特区の手続きがゆがめられた」と批判している。

◆制度のPRあった
内閣府地方創生推進事務局の話 「当時の担当者に確認したところ、『かなりチャンスがあると思っていただいていい』という発言はしていないとのことだが、国家戦略特区という新しい制度を自治体などに大いにPRすることはあったと聞いている」

◆「官邸の最高レベル」発言で注目 本人は否定
加計学園獣医学部新設を巡っては、認可に慎重だった文科省に対し、内閣府の幹部が「総理のご意向」などと、早期開学に向けた対応を迫った複数の文書の存在が明らかになっている。国家戦略特区の活用を自治体側に持ちかけたとされる藤原豊氏は、一連の文書の中で「官邸の最高レベルが言っていること」と発言した人物として注目された。
文書は二〇一六年九月二十六日、内閣府審議官に昇格していた藤原氏文科省の担当課長らと話した際の発言を、文科省でまとめたもので「藤原内閣府審議官との打合せ概要(獣医学部新設)」と題されていた。
文書には藤原氏の発言として「平成三十年四月開学を大前提に、逆算して最短のスケジュールを作成し、共有いただきたい。これは官邸の最高レベルが言っていること」「『できない』という選択肢はなく、事務的にやることを早くやらないと責任を取ることになる」などとあった。藤原氏は発言を否定した。
別の文書には「大臣ご確認事項に対する内閣府の回答」と題するものもあり、「総理のご意向」との記述があった。発言者は明らかになっていないが、文科省前川喜平・前事務次官は一連の文書の存在を認め、「行政がゆがめられた。背景に官邸の動きがあった」と述べ、内閣府や首相周辺を批判した。
藤原氏は昨年七月の国会で「獣医学部の新設で総理から個別の指示を受けたことは一切ない。文科省に官邸の最高レベルや総理のご意向と伝えたことはない」と反論している。