無期雇用転換 雇い止めの横行を防げ - 東京新聞(2018年3月30日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018033002000178.html
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有期の労働契約で働く人が無期雇用に転換できる「無期転換ルール」が四月から本格的に始まる。解雇への不安を解消する制度だが、無期になる直前に雇い止めをされるケースが横行している。
無期転換ルールが、雇用の安定を損なうのなら制度の見直しを検討すべきだ。
非正規で働く有期雇用の人は、リーマン・ショックで雇い止めが問題となった。そこで雇用を継続させるためにこのルールが導入された。同じ職場で通算五年を超えて働くと、本人が求めれば無期雇用に転換できる。
四月で導入から五年となり転換を迎える人がでてくる。有期で働く人は全国に約千二百万人、うち四百万人以上が無期転換できる可能性があるといわれる。
無期転換を進める企業もあり一定の効果はあるようだが、ここに来て雇い止めをして無期転換を逃れているとみられるケースが目立つ。一般企業に限らず大学や研究機関、病院などの労働者が声を上げ始めた。
数年働いて契約が切れた後、六カ月以上を経て再雇用されると以前に働いた期間は「通算五年」にカウントされずリセットされる「クーリング期間」がある。
この期間は、企業が繰り返し利用して有期で雇い続けることで、無期転換を阻む「抜け穴」になっていると指摘されている。
厚生労働省が昨年末に公表した大手自動車メーカー十社の調査によると、七社が契約期間の上限を五年未満としてクーリング期間を設けていた。
こうした懸念はルールが導入された二〇一三年当時からあった。企業のモラルに頼るだけでは不十分である。政府は「抜け穴」をふさぐ手だてを考えるべきだ。
無期転換されても正社員になるわけではない。賃金や職務、福利厚生などの条件は非正規雇用のままである。ここにも課題がある。
十四年勤めた製薬会社に雇い止めされた女性は、必要な資格取得を申し出たが「『パートに研修は考えていない』と言われた。必要なくなれば切り捨てられる存在」と訴えた。正社員と同じ業務を担っていた自負があっただけに落胆は大きかっただろう。
企業はもともと「雇用の調整弁」として有期雇用の人を抱えてきた。だが、企業経営はそこで働く人の安定した生活があってのものだ。人材を育て待遇改善や正社員化にも努める発想に改める必要がある。