中学の「道徳」教科書 初検定 各社の「評価」対応分かれる - NHK(2018年3月27日)

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180327/k10011381071000.html?utm_int=detail_contents_news-related_001

来年4月から教科に格上げされる中学校の道徳で、初めてとなる教科書の検定が行われました。教科となる道徳で大きな課題となるのが「評価」ですが、道徳の教科書を作成した8社は、「評価」の扱いをめぐって対応が分かれました。

今回の検定は来年4月から使われる中学校と高校の教科書、合わせて68点を対象に行われました。

このうち「特別の教科」に格上げされる中学校の道徳は、8つの会社の教科書が一部の記述を修正したうえですべて合格しました。

中学校の道徳では、「国を愛する態度」や「家族愛」など22の内容項目を教えるよう定められています。さらに学校には、子どもたちに特定の考え方を押しつけたり、ほかの子どもと比べたりしないよう、数値などでなく記述式で「評価」するよう求めています。

今回の検定で道徳の教科書を作成した8社のうち、自己評価を段階別で評価するページを設けたのは、5社でした。

各社の評価の扱いと、その意図についてまとめました。

評価するページを設けた5社は
日本教科書】
教科書の巻末に「心の成長を振り返りましょう」と題して、「国を愛し、伝統や文化を受け継ぎ、国を発展させようとする心」や「家族を大切にし、家族の一員として貢献しようとする心」など内容項目ごとに4段階で自己評価させています。会社は「石川県の中学校で活用している取り組みを参考にして教科書に盛り込んだ。子ども自身が学びを振り返るために作成したもので、そのまま教員が評価に使うことは考えていない」と話しています。

廣済堂あかつき】
「自分自身を振り返って」というコーナーで、「家族を愛し、充実した家庭生活を築く」など22の項目ごとに「とてもよくできた」「できなかった」など5段階で自己評価させるページを設けています。
会社は「教員がこのページだけを元に評価することは想定しておらずあくまでも手がかりの1つだ」と話しています。

【教育出版】
「道徳の学びを記録しよう」というコーナーで、22の項目について、「心かがやき度」と題して3つの星マークを使ってみずからの学びの変化を記すよう求めています。会社は「授業で納得したことや、逆に遠く感じたことなど、そのつど、生徒自身が考えを深められるように設けた」と話しています。

【東京書籍】
「自分の学びをふり返ろう」というページを設けて、自分の考えを友達に伝えることができたかや、授業の内容を深く考えられたかなど、4つの質問に対して「意欲的にできた」「できなかった」などとABCDを使って自己評価させています。会社は「自分の気持ちを文章で書くことが得意ではない子どももいるなかで、分かりやすく学びを振り返る指標が必要だと考えた」と話しています。

日本文教出版
授業ごとにみずからの変化を直線上に記すよう求めています。会社は、「子ども自身の振り返りと教員の評価の参考になるよう設けた。22の内容項目ごとの評価は検討しなかった」と話しています。
評価するページを設けなかった3社は
学校図書
「学びの記録」として、教材ごとに授業の内容や、自分の考えを記述によって表現させる欄を設けています。会社は「自由記述を通して、自分が考えたことを生徒自身で整理してほしかった。段階別評価は検討しなかった」と話しています。

【光村図書】
「学びの記録」として学んだことやそれを生かせたと思った出来事などを文章で記入させています。会社は「教員の評価の参考にしてもらうため記述欄を設けた。段階別での自己評価は検討もしなかった」と話しています。

【学研教育みらい】
「心の四季」というコーナーに生徒たちが自由に記述する欄を設けています。会社は「記号を使った自己評価でも子どもたちが心の成長を他人と比べることにつながりかねない。道徳の評価にそぐわないという判断し、自由記述だけにとどめた」と話しています。
道徳の教科化 導入に至るまで
道徳の教科化は、戦前の愛国主義教育の中心だった「修身」の復活につながるとして戦後一貫して見送られてきました。

しかし、平成18年に教育基本法が改正され、「国や郷土を愛する心」などの文言が明記されました。さらに、全国でいじめ自殺などが相次ぎ、道徳の重要性が指摘されるようになりました。

そこで、文部科学省は小学校はことし4月から、中学校は来年4月から道徳を教科に格上げすることを決めました。

教科となることで変わるのは、国が検定した教科書が使われること、そして、学校が「評価」を行うことです。ただし、「評価」の方法は子どもたちの内心の自由に配慮して、ほかの教科と違って数値化せずに記述式とすることや入試には活用しないことを決めています。
専門家「使用には注意が必要」
日本道徳教育学会の会長で、武庫川女子大学大学院の押谷由夫教授は「道徳教育において、子ども自身が学びを振り返るということはとても大切なことであり、その方法の一つとして自己評価を段階別ですることは認められる。ただし、その自己評価を使って教員がそのまま段階別で評価したり、子どもどうしで見せ合ってレベルを競い合ったりしないように、学校での使用には注意が必要だ」と話しています。