(大弦小弦)「何やってるんだ?」。神奈川の県立高校を卒業した1987年3月、沖縄の高校卒業式で… - 沖縄タイムズ(2018年3月27日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/228659
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「何やってるんだ?」。神奈川の県立高校を卒業した1987年3月、沖縄の高校卒業式で生徒が壇上の日の丸を引き下ろす場面をテレビで見た。同い年なのに行動の意味が理解できず、「沖縄の人は怖い」と安易にレッテルを貼った

▼1年後、灰谷健次郎の児童文学「太陽の子」を偶然読んだ。主人公のふうちゃんが神戸で沖縄料理店を営む両親や、集う県出身者の秘めた過去の背景に沖縄のつらい歴史があることを知る物語

▼兵士より住民が犠牲になった上、味方であるはずの旧日本軍に殺され、「集団自決(強制集団死)」に追いやられた沖縄戦のことを初めて知った。大学受験で日本史を丸暗記したはずなのに、何も知らなかった

▼読後、沖縄の歴史と同い年の卒業式でのやむにやまれぬ行動が結びつく。無知の怖さと、レッテルを貼ることの卑劣さを思い知った

▼米軍が阿嘉、慶留間、座間味島に上陸した73年前の3月26日は翌日に渡嘉敷、4月1日に本島へ続く地上戦が始まった日だ。狭い沖縄で3カ月以上も激しい戦闘に巻き込まれ、逃げ回った人々の体験は想像を絶する

沖縄戦の学びを躊躇(ちゅうちょ)するふうちゃんに、教師は語る。「死んだ人が何を言いたかったのか、もしその声を聞く耳がなかったら、死んだ人は犬死にじゃないか」。ふうちゃんに負けないよう、聞く耳を持ち続けたい。(磯野直)