米の銃規制運動 若い力が社会を変える - 東京新聞(2018年3月27日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018032702000134.html
https://megalodon.jp/2018-0327-0919-11/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018032702000134.html

巨大なうねりに成長した。米フロリダ州の高校銃乱射事件を生き延びた高校生が、銃規制を求めて呼び掛けた抗議運動だ。人口よりも銃の方が多いという米国。若い力でこの現状を変えてほしい。
「私たちの命のための行進」と銘打ち、二十四日に全米で繰り広げられたデモ。首都ワシントンでは、ホワイトハウス連邦議会を結ぶペンシルベニア通りを埋め尽くした人々を前に、事件のあった高校の生徒らが登壇した。
その一人のエマ・ゴンザレスさん(18)は「六分二十秒の間に、十七人の友達の命が奪われ、十五人が負傷した」と切り出した。続いて犠牲者一人一人の名を挙げた後、急に黙り込んだ。
涙を見せながら真っすぐ前を見つめていたゴンザレスさんは「私が登壇してからちょうど六分二十秒がたちました」と再び口を開き「他人任せにせずに、あなたたちの命のために闘おう」と訴えた。
抗議運動を企画した高校生はソーシャルメディアを駆使して情報を発信し、共感する人を結び付けるネットワークをつくりあげた。運動が急速に拡大したのは、物心ついたころからネットに親しみ、「デジタルネーティブ」と呼ばれるほどソーシャルメディアを使いこなせる世代だからだ。
銃乱射事件が起きるたびに規制強化が叫ばれながら、強力なロビー団体全米ライフル協会(NRA)の抵抗と、武器保有を認めた憲法を根拠とする根強い反対論に阻まれてきた。
ところが今回は、デルタ航空ユナイテッド航空をはじめ大手企業がNRAの会員向け優遇サービスを打ち切る動きが相次ぎ、これまでとは様子が異なる。
ここまで広がった運動が実を結ぶことを期待してやまない。そのためには十八歳に達して選挙権を得た若者が、十一月の中間選挙で自分の意思を示す必要がある。
一九八〇〜二〇〇〇年ごろに生まれた人は「ミレニアル世代」と呼ばれる。総人口の四分の一から三分の一を占め、戦後のベビーブーマーを抜いて最大の人口層である。
この世代が声を上げれば強い影響力を持つのだが、残念ながら投票率は低い。一六年の大統領選では三十歳未満の投票率は約46%で、平均より15ポイントも低かった。
運動が現実の壁につき当たることもあるだろう。それでもあきらめないでほしい。社会を変革できるのはあなたたちなのだから。