「前川氏を見習い、目を覚まして正義のために戦うべき」政治評論家・森田氏が佐川氏にエール - AERA dot. (2018年3月27日)

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前代未聞の決裁文書改竄(かいざん)の発覚から3週間余。かつて最強官庁とうたわれた財務省のスリートップ、国税庁長官にまで上り詰めた佐川宣寿・前理財局長(60)が3月27日、衆参両院での証人喚問に臨む。問題の核心はただ一点。学校法人森友学園への法外に安価な国有地売却に、安倍晋三首相夫妻がどう関与していたのか。この疑惑を玉虫色で終わらせたら、民主主義は崩壊する。

日本会議という戦前的国家教育を目指している勢力が、学校経営を拡大しようとしていた人物と組み、右翼的な思想を強く持つ昭恵夫人を巻き込んで計画を進めた。それを官庁ぐるみで覆い隠そうとしたけどバレてしまったということ。一番深刻なのは、政治家と役人が順法精神と健全な道義心を失ったことです。財務省は丸ごと堕落して政治家の手先になり、わが日本国をめちゃくちゃにしたんです」

 森友学園問題の構図と本質をこう読み解くのは政治評論家の森田実氏(85)だ。霞が関の現役キャリア官僚も、こう自嘲する。

「これまでの安倍1強体制もひどかったし、今の財務省もひどいものです。ことここに及んで官邸の内閣延命至上主義に逆らえない官僚の凋落(ちょうらく)ぶりを笑ってください。そして、現在の経済産業省支配の官邸も完全に限界に来ています。出向で内閣官房に所属している私に官邸への情報アクセス権がないのは異常だと思う。国民のためには取り換えたほうがいいと思います」

 2014年の内閣人事局の発足で、幹部職員の人事権が官邸に集中したのは事実だ。だからといって人事権者に尻尾を振って虚偽答弁をし、決裁文書を改竄してまで関与を隠すのが正しいあり方だとは当の官僚たちも思っていないに違いない。かつての部下たちのこうした歯がゆい気持ちに、佐川氏は証人喚問でどう答えるのか。元東京地検特捜部検事の郷原信郎弁護士はこう懸念する。

「弁護士が補佐で就けば、決裁文書に関する質問は、刑事訴追を受けるおそれがあるという理由で証言拒否をするでしょうし、国会答弁に関する質問も、改竄に関連するとの理由で拒否するかもしれない。そうなると答えられるのは、答弁内容の決定の流れの一般論ぐらいになる。質問側の攻め手の問題以前になってしまう可能性が高い」
一方、佐川氏の証人喚問に最後まで抵抗しながら自民党に押し切られた格好の官邸も、もはや求心力低下の歯止めが見つからない。

「高らかに憲法改正案を披露する場のはずだった党大会でも、演説の内容は抑制された文案に差し替わって9条についても方向性を示すだけになる。憲法改正自体がもう無理ですから。昭恵夫人の証人喚問には絶対応じない姿勢の首相も、愛媛県今治市加計学園関係の文書改竄疑惑が発覚したことでさらに窮地に追い込まれ、かなり弱気になっています」(政府関係者)

 プーチン氏がロシア大統領4選を果たして間もない3月21日に開かれた日ロ外相会談でも、安倍内閣の支持率アップにつながるサプライズはなかった。ロシア政治が専門の木村汎(ひろし)・北海道大学名誉教授(81)が語る。

「5月と9月に2回も訪ロを約束させられるなんて完全に足元を見られている。プーチンと安倍首相はイエスマンの小物しか側近に置かない国粋主義的な強権政治家という共通点はあるが、器が違い過ぎる。旧ソ連時代の諜報機関を経て裸一貫でもまれて生き抜いてきたサバイバーと、苦労知らずのお坊ちゃん育ちでは人間力が比較にならない」

 同じ身命を賭して仕えるならという例えは酷かもしれないが、森田氏は加計学園問題で「行政がねじ曲げられた」と官邸の圧力を告発した前川喜平・前文部科学事務次官を引き合いに出し、佐川氏にこうエールを送る。

「前川氏を見習い、目を覚まして正義のために戦うべきだ。安倍首相に殉ずるなんてバカなことをやっている場合じゃない。経産省から出向して昭恵さん付き政府職員だった谷査恵子さんも、絶対に証人喚問すべきです。国有地売却に絡んで財務省に再三問い合わせをした経緯の文書を森友学園側にファクスしている本人ですから、疑惑の解明には外してはいけない公務員です」

(編集部・大平誠、ジャーナリスト・村上新太郎)

AERA 2018年4月2日号