(余録)どう教え、どう成績をつけたらいいか… - 毎日新聞(2018年3月26日)

https://mainichi.jp/articles/20180326/ddm/001/070/098000c
http://archive.today/2018.03.26-004934/https://mainichi.jp/articles/20180326/ddm/001/070/098000c

どう教え、どう成績をつけたらいいか、いまだに迷っている先生も多いのではないか。道徳が4月から小学校で正式教科になる。安倍政権が熱心に進めてきた「教育改革」の一環である。だが、もっと難しいのは政治家への道徳教育かもしれない。
森友学園への国有地売却の決裁文書が改ざんされた問題で、自民党には、あす証人喚問が予定される佐川宣寿(さがわ・のぶひさ)前国税庁長官に責任を押しつけようとする動きが目立つ。批判の矛先を財務省ばかりに向け「佐川事件」と名付けたり、省幹部を侮辱する質問をしたりする議員にはあきれるしかない。
道徳といえば論語だ。「君子は諸(こ)れを己(おのれ)に求む。小人(しょうじん)は諸れを人に求む」。君子は何事も自分に責任を課すが、小人は責任を人のせいにする。政界に君子はなかなか見当たらない。
自民党文教族議員2人の指摘を受け、中学校の授業内容に介入した文部科学省の官僚はどうか。名古屋市教育委員会に出したメールには「道徳教育を行う場」にふさわしくない人選をしたとでも言うような表現があった。では、これはふさわしい行為なのか。
「正直、誠実」「公正、公平、社会正義」「相互理解、寛容」……。小学校の学習指導要領は道徳で教える項目を列挙している。政治家や官僚に成績をつけたらどうなるだろう。
人のせいにしたり、偉い人の顔色ばかりうかがったりするのはやめましょう。おかしいことはおかしいとはっきり言える人になりましょう。せめて学校では、そんな道徳教育をしてほしい。