(余録)歯からのゲノム情報を解析して… - 毎日新聞(2018年3月14日)

https://mainichi.jp/articles/20180314/ddm/001/070/078000c
http://archive.today/2018.03.14-001016/https://mainichi.jp/articles/20180314/ddm/001/070/078000c

歯からのゲノム情報を解析して復元された縄文時代の40歳代女性の顔の写真が報じられた。髪はちぢれ、瞳は明るい茶色というのが遺伝子から得られた情報という。縄文のご先祖様ににわかに親近感がわいた。
それで思い出したのは縄文時代には男女共に抜歯、つまり特定の歯を人為的に抜く習慣があったという話である。抜くのは犬歯、切歯など時代と地域でさまざまだが、この習慣は東日本から西日本へ広がり弥生時代まで続いたそうだ。
痛さを想像するだけで背筋が寒くなるしきたりは何のためだったのか。有力なのはやはり成人になる試練だったとの説のようだ。出土する骨には15歳ぐらいのものから抜歯の痕があるので、成人年齢もそのぐらいだったと推定される。
こんな成人式のあった世に生まれなかったのを感謝せねばならぬ今日の若者である。しかし現代の契約社会が大人になったばかりの若者にいつも優しいとは限らない。成人年齢を18歳に引き下げる民法改正の今国会成立が目指される。
この改正でローンやクレジットを含め、18歳になれば親の同意なしに契約できるようになる。女性が結婚できる年齢は16歳から18歳へと引き上げられ、男性と同じになる。ただし喫煙や飲酒などは今までと同じ年齢制限が維持された。
すでに選挙権のある「18歳以上」だから、市民たる法的権利は持って当然だろう。ただそのための消費者教育、市民教育は欠かせない。一人前になるためにくぐり抜けてもらわねばならぬ試練は今もある。