(筆洗)成人年齢を二十歳から十八歳に引き下げる - 東京新聞(2018年3月14日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2018031402000127.html
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十七世紀のスペイン最大の画家ベラスケスが描いた、「フェリペ・プロスペロ王子」の肖像画。当時、二歳のハプスブルク家の王子が女の子の服を着ている。
魔よけの意味らしい。女児に比べ男児の死亡率が高く、女の子の服で悪魔の目を欺こうとしたようだ。中野京子さんの「『怖い絵』で人間を読む」にあった。
問題はその服。その時代の子供服は大人の服をそのまま小さく仕立てたものにすぎない。病弱な王子にとって不幸なのはコルセットで胸をきつく締めつけた服が当時の大人の流行だったこと。二歳の男の子にはその大人の服がいかに窮屈だったことか。
十八歳といえばまだ自由で気楽な服を着ていたいかもしれぬが、窮屈な大人の服を二年早く着ることになるのか。政府は成人年齢を二十歳から十八歳に引き下げる民法改正案を閣議決定した。成人を二十歳とした、一八七六年以来の見直しである。
投票年齢はすでに十八歳以上になっている。十八歳成人は世界の大勢であり、少子高齢化が進む中、若者の社会参加を早める意味もあろう。が、なんだか、この話、子ども時代という「夏休み」を二年短縮するようで、大人としては申し訳ない気もする。
「成人とは人に成ること」と谷川俊太郎さんが書いていたが、それがいかに難しいことか。その旅に二年早く追い立てられる。しかもお酒は今まで通り二十歳から。