辺野古差し止め県敗訴 実質審理せず不誠実 - 琉球新報(2018年3月14日)

https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-681981.html
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米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古での新基地建設工事を巡り、無許可の岩礁破砕は違法として、県が国を相手に岩礁破砕の差し止めを求めた訴訟で、那覇地裁は県の訴えを却下した。義務確認の訴えも退けた。
県が司法に判断を求めるしか手段がないと訴えたにもかかわらず、審理対象外として門前払いを求めた国の主張を全面的に受け入れた。
漁業権の有無について判断を避け、実質審理に入らなかったことは不誠実である。行政権をチェックする裁判所の役割を果たさなかったと批判されても仕方ない。
今回の訴訟は、沖縄防衛局が昨年3月末に期限切れとなった岩礁破砕の許可申請を更新しなかったことが原因で、県が国を提訴した。
争点は県知事に岩礁破砕の許可を得なければならない漁業権が、工事現場水域に存在するかどうかだ。
岩礁破砕許可申請を不要とした理由について沖縄防衛局は、工事海域での漁業権が消滅しているためと説明した。これに対し県は「漁協による漁業権の一部放棄の決議によって漁業権は消滅しない。一部放棄がなされたとしても新たに漁業権の変更の免許を受けなければならない」と主張した。
国は実質審理に入らないよう2002年の最高裁判所判例を持ち出した。行政主体が自らの権限を保護するためには裁判所を利用できないというものだ。県の訴えは行政主体としての自らの岩礁破砕等の権限を保護するためだから、裁判所を利用することは許されないと主張した。
この判例行政法学者の批判は強いが、那覇地裁は国の主張通り県の訴えを不適法として却下した。妥当性に疑問が残る。
県側は漁業権の有無について「裁判所が法を適用して判断するなら終局的に解決する。解決することは裁判所の権限で使命だ」などと訴えていた。しかし裁判所は「入り口論」で訴えを退け、判断しなかった。
翁長雄志知事が意見陳述で「長年積み重ねられてきた漁業関係法令の運用に関する見解を、国は辺野古案件のため、いわば恣意(しい)的にねじ曲げたわけであり、このようなやり方は国が常々述べている法治国家のあり方からほど遠い」と主張した。だが裁判所には届かなかった。
敗訴したとはいえ県は、裁判を通して新基地建設問題を世論に訴えた。その意義は大きいが、県と国の5回の訴訟を通じて、県の主張に向き合わない裁判所の姿も浮き彫りになった。
新基地建設予定海域に活断層が走っている可能性があり、危険性が指摘されている。民意を無視した新基地建設に正当性はない。知事は「あらゆる手段を使って新基地を阻止とする」と繰り返してきた。今、あらゆる局面でその発言を実践すべきだ。