「社会を変えたいなら逃げるな」 性の話も“ガチ”で対話 自問する無意識の加害 - 東京新聞(2018年3月3日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/211783
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◆青葉のキセキ−次代を歩む人たちへ− 自分らしく生きる第3部 亮太「普通」を問う(下)
「落ち着いたら、お父さんと3人で飲みに行こうってお母さんに言われたんだ」。母と向き合った約1週間後、平良亮太(23)は勤務先の「がちゆん」(本社・沖縄市)でカミングアウト後の家族との関係の変化を興奮気味に語っていた。社長の国仲瞬(25)は「早く報告しろよー。こっちは心配してるってのに…」と笑った。
がちゆんは、本土からの修学旅行生らの平和教育プログラムを企業活動の柱としている。沖縄戦基地問題を教えるのではなく、同じ目線で意見を出し、双方向の対話を通じて学び合う「共育」を目指す。がち(本気)でゆんたく(対話)するのが企業理念だ。
基地問題と性の話で共通するのは「無意識、無関心の加害」と国仲は考える。基地問題で安易に中立の立場を表明する発言を例に挙げ、「問題を理解しているようで実質は考えることを放棄し、無意識に弱い立場をより傷つけている」と指摘する。
性の話も同様だ。亮太は、ある講演会で「同性愛者という人たちがいる。いてもいいんだよ」という発言に驚き、傷ついた。「いてもいいって、許可されないといけないことなの?」。共感しているようで、本当の理解はしていない。
「話題にもされないまま、理解を深めるなんて無理」。関心のない層に自分事として考えてもらうためには、対話しかない。亮太と国仲はそう考えている。
取引先の相手を前にして、亮太は同性愛者だとは言えない。そんな時、国仲は「社会を変えたいなら逃げるな。覚悟を決めろ。傷つくのが嫌なら踏み込むな」と亮太を叱る。亮太の一言で目の前の当事者を救えたかもしれない。そのチャンスをみすみす逃しては、社会は変わらない。「異性愛者も同性愛者も、社会みんなにとって自分事なんだ」と国仲は語る。
亮太ががちゆんに入社して約1年。活動し始めて「怖い」という思いが出てきた。新しい概念が次々に登場し、性の在り方もより多様で複雑になっている。「全ての人の気持ちを代弁なんてできないし、しようとも思っていない。でも無知は許されない」。情報収集や勉強は欠かせない。
また、LGBT以外の社会的少数者にも目が向くようになった。「別のマイノリティーを傷つけてしまってはいないか」。無意識に加害しないよう、日々自問する。「正解はない。でもみんなが認め合って、自分らしく生きられる『普通』な社会にしたい」。もがき迷いながらも、一歩を踏み出している。=敬称略(社会部・川野百合子)