防衛費めぐる予算審議 低調な安保論議を危ぶむ - 毎日新聞(2018年2月26日)

https://mainichi.jp/articles/20180226/ddm/005/070/003000c
http://archive.today/2018.02.26-005637/https://mainichi.jp/articles/20180226/ddm/005/070/003000c

国会での防衛費をめぐる論議が低調だ。来年度予算案は今週衆院を通過する見通しだが、このままでは安保論議が置き去りになってしまう。
例えば、北朝鮮の核・ミサイルに対抗して整備する陸上配備型ミサイル防衛「イージス・アショア」だ。
搭載する新型の迎撃ミサイルは日米が共同開発したが、迎撃実験は2回連続で失敗している。
2基で約2000億円に上るシステムだ。費用対効果の議論は欠かせないが、踏み込んだ質疑はない。
米国からこうした最新鋭装備を購入する際には有償軍事援助(FMS)という契約方式で調達する。
代金は米国の見積もりに応じて前払いするが、年間数十億円の過払い金の返還が滞っているという。
FMSは装備調達の高額化を招く一因ともなっているが、どう改善するのかという議論は乏しい。
とりわけ、疑問なのは、長射程の巡航ミサイル導入をめぐる議論が深まっていないことだ。
防衛省は中国の海洋進出を念頭に離島防衛を強化するというが、北朝鮮に届く巡航ミサイルも整備する。
緊急時には北朝鮮のミサイル基地を攻撃する敵基地攻撃能力としても利用できる兵器だ。3種類のミサイルの取得などに22億円を計上した。
政府は敵基地攻撃を「自衛の範囲」と解釈する一方、専守防衛の観点から装備を保有してこなかった。
安倍晋三首相は14日の衆院予算委員会で「敵基地攻撃が目的ではない」としつつ、専守防衛について「純粋に防衛戦略として考えれば大変厳しいのが現実だ」と述べた。
軍事技術が向上し、安保環境が厳しくなる中、抑制的な専守防衛がいかに大きな制約になっているかということを強調したかったのだろう。
専守防衛の限界をどうとらえるのか。重要な問題提起だが、野党が専守防衛論議を深めていこうとしているとは思えない。
民進党の分裂や質問時間の削減という事情もあるだろう。働き方改革なども重要だが、野党の安保問題の提起が不足しているのは明らかだ。
どんな防衛力を整備し、専守防衛との整合性はとれているかは、予算審議を通じて国会が判断するしかない。論点を並べ、徹底した議論をする責任を国会議員は自覚すべきだ。