グアンタナモ 米国の汚点なぜ拭わぬ - 東京新聞(2018年2月26日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018022602000140.html
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トランプ米大統領グアンタナモ収容所の存続を命じた。無実の人も拘束したばかりか、拷問による尋問という非道ぶりが国際社会から非難を浴びる施設だ。閉鎖しないのでは人権大国の名が泣く。
グアンタナモ収容所は二〇〇一年の米中枢同時テロ後、キューバにある米海軍基地に設けられた。「テロとの戦い」によって拘束・収容されたアフガニスタン人やイエメン人、サウジアラビア人らが最も多い時で八百人近くいた。
トランプ氏は先月、収容所の存続を命じる大統領令を出した。命令は収容所が「合法、安全、人道的であり、国内法と国際法にも合致している」と強弁しているのだから恐れ入る。
存続支持派は、釈放されてテロ活動に舞い戻った者もいると主張するが、身に覚えのない疑いをかけられて拘束された人もいた。収容者は大量の水を顔に注ぎ続けて息ができないようにする「水責め」の拷問に遭い、しかも正式な裁判も受けられないまま長期間拘禁される。
人権団体によると、現在収容されている四十一人の拘束期間は、全員が十年以上に及ぶ。
テロ容疑者を米国内に移送すれば、米憲法に基づいて容疑者の人権を保障する必要が生じる。
その点、グアンタナモキューバから「租借」している土地でキューバに主権があり、米国の管轄権は及ばない。ご都合主義もはなはだしい。
収容所の閉鎖を公約したオバマ前大統領は、政権末期の一六年二月、閉鎖計画を議会に提出した。オバマ氏は「収容所はわれわれの価値観とは相いれない。法の支配を尊重する米国の汚点だと見なされている」と指摘した。
収容所の年間経費も約四億五千万ドル(約四百八十億円)に達するとして閉鎖を求めたが、共和党主導の議会は動かなかった。
トランプ氏は拷問に賛成する人権感覚の薄い人物だ。そんな人が出した大統領令が、必要ならば新たな拘束者の収容もあり得るとしている点も看過できない。
米国は十九世紀にスペインとの戦争に勝ってキューバ保護国化し、グアンタナモに基地を建設した。一九五九年のキューバ革命で誕生した現社会主義政権は基地の返還を要求しているが、米国はフランクリン・ルーズベルト政権時に交わした条約を盾に拒んでいる。
米国は帝国主義時代の残滓(ざんし)に向き合ってはどうか。