(大弦小弦)世紀のスクープを出した新聞社ではなく、先を越された… - 沖縄タイムズ(2018年2月9日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/207233
https://megalodon.jp/2018-0209-1001-38/www.okinawatimes.co.jp/articles/-/207233

世紀のスクープを出した新聞社ではなく、先を越されたライバル社が物語の舞台。後追いのつらさは痛いほど分かるだけに、必死に食らいつく姿に心がざわつく

ベトナム戦争の内幕を記した米国防総省の機密文書を巡る映画「ペンタゴン・ペーパーズ」を都内であった試写会で見た。1971年、文書の存在を先に報じたニューヨーク・タイムズが出版差し止め命令を受ける中、ワシントン・ポストは国家反逆罪に問われかねない重圧と、政府のうそを暴く報道の使命の間で揺れ動く

▼掲載に踏み切ると、他の新聞も追随。ニクソン政権はポスト紙を提訴したが、最高裁はこう退ける。「報道機関は統治に仕えるものであり、政権や政治家に仕えるものではない」

▼米国政府にもさまざまな過ちや矛盾はあるが、それでも、政策決定過程を記録し、後世の検証を可能にするという最低限の誠実さはある。日米間の密約も発覚は大概、米公文書からだ

ペンタゴン・ペーパーズも、当時のマクナマラ国防長官が失敗の教訓として、より客観的に戦況を分析する文書の作成を指示していたからこそ、報道につながった

▼それに引き換え、国民の疑念に「記録は破棄した」と国会で堂々と言い続ける官僚が組織のトップに出世する日本政府。歴史の評価に耐えられるのか。何をか言わんやだ。(西江昭吾)