飯塚事件 死刑執行後の再審可否 6日、福岡高裁で決定 - (毎日新聞2018年2月3日)

https://mainichi.jp/articles/20180204/k00/00m/040/089000c
http://archive.today/2018.02.05-075440/https://mainichi.jp/articles/20180204/k00/00m/040/089000c


目撃証言の信用性など争点
福岡県飯塚市で1992年、女児2人が殺害された「飯塚事件」で2008年に死刑が執行された久間三千年・元死刑囚(当時70歳)の再審請求即時抗告審で、福岡高裁(岡田信裁判長)は6日、再審開始の可否について決定を出す。死刑執行後に再審開始決定が出た例はなく、再審が認められれば死刑制度の存廃論議が高まる可能性がある。目撃証言やDNA型鑑定の信用性が争点で、福岡高裁の判断が注目される。
久間元死刑囚は一貫して無実を訴え、事件への関与を示す直接証拠はなかった。確定判決は、女児の遺体などから採取された血液のDNA型鑑定や血液型鑑定、目撃証言などを総合評価し有罪と認定したが、弁護側は再審請求審でこれらの証拠には信用性がないと主張。福岡地裁決定(14年)はDNA型鑑定の証拠能力の低さは認めながら、その他の状況証拠を総合考慮して再審請求を棄却した。
即時抗告審では、状況証拠の一つとされた目撃証言の信用性が大きな争点となった。弁護側は、遺留品発見現場で久間元死刑囚の車と特徴が似た「紺色のワンボックスタイプで後輪がダブルタイヤのワゴン車」を見たとの証言について、事前に久間元死刑囚の車の特徴を把握した警察官の誘導があったと指摘した。さらに現場での走行実験結果などから、カーブが連続する下り坂で証言されたような詳細な車の特徴は把握できないと主張した。
DNA型鑑定(MCT118型鑑定)については、鑑定に使われたネガフィルムの解析から「久間元死刑囚とは違う真犯人のDNA型が出ており、鑑定結果は改ざんされていて信用性はない」と改めて指摘。他に実施された3種のDNA型鑑定についても「久間元死刑囚のDNA型は出ていない」と強調した。遺体から採取された血液については「B型の久間元死刑囚と違うAB型だ」と主張した。
これに対し、検察側は「審理し尽くされた論点の蒸し返しだ」と反論。「目撃証言は自然かつ合理的だ。DNA型鑑定は改ざんされておらず、血液型鑑定も久間元死刑囚と符合していて有罪認定は揺るがない」としている。【平川昌範】


ことば【飯塚事件
1992年2月、福岡県飯塚市の小学1年の女児2人が行方不明になり、同県甘木市(現・朝倉市)の山中で遺体で見つかった。県警は94年9月、久間三千年・元死刑囚を死体遺棄容疑で逮捕、同年10月には殺人容疑で再逮捕した。久間元死刑囚は一貫して否認し、公判では無罪を主張した。福岡地裁は99年9月に死刑を言い渡し、最高裁が2006年9月に上告を棄却。再審請求を準備していた08年10月に死刑が執行された。09年10月には久間元死刑囚の妻が再審請求。14年3月に福岡地裁が請求を棄却したため即時抗告していた。