送電網、空きあり 大手「満杯」 実は利用率2割 - 東京新聞(2018年1月31日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201801/CK2018013102000154.html
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発電所からの電気を流す基幹送電線の利用率が大手電力10社で1〜2割にとどまっていることが、京都大の安田陽特任教授(電力工学)の分析で分かった。再生可能エネルギーを手掛ける事業者が、大手電力から送電線に空きがなく「満杯」として、高額な送電線の増強費用を求められるなどで、事業をあきらめる事態が相次いでいるが、実際の送電線には空きが十分あることを示した。 (伊藤弘喜)
大手各社の基幹送電線計三百九十九路線について、一年間に送電線に流せる電気の最大量に対し、実際に流れた量を「利用率」として分析した。流れた電力量などは電力業界でつくる「電力広域的運営推進機関」のデータ(二〇一六年九月〜一七年八月)を使った。
それによると、全国の基幹送電線の平均の利用率は19・4%。東京電力が27%で最も高く、最も低いのは東北電の12%だった。
一方で、各社が電気を流す余裕がまったくない「空き容量ゼロ」と公表した路線は全路線の34・8%にあたる百三十九路線だった。特に、東北電は七割近くの路線を「空きゼロ」と公表し、中部電も六割に上っていた。
再生可能エネルギーに限らず新たに発電事業を始める際、送電線を所有する大手電力会社に頼まなければならない。しかし、「空きがない」ことなどを理由に送電線の高額な増強費用を求められる事例が全国で発生。新興の再生可能エネ事業者には負担が重く、事業を断念する例も出ている。
だが、「空きゼロ」の送電線が多いにもかかわらず、実際の利用率が低いことは、送電線の運用によっては再生エネ導入の余地が大きいことを示している。
電力各社は「契約している発電設備の分は稼働していなくても空けておく必要がある」と話しており、「空きゼロ」が多い背景には運転停止中の原発向けまで、送電線を空けている事情も大きいとみられる。また、各社は全ての発電設備が最大出力した場合という極めてまれなケースを想定してきた。
安田氏は「送電線の利用実態に合わせるとともに、欧米で一般化している天候などに応じ送電線を柔軟に運用する手法を使えばもっと再生エネを受け入れられるはずだ」と指摘している。

<基幹送電線> 送電線の中でも特に太く、高圧で大量の電力を送れる電線。東京電力など大手電力会社が所有し管理。発電所や、各大手電力が所管する地域ごとの送電網同士も結ぶ。基幹送電線に流れる高圧で大量の電力は、支流の電線に入り、最終的に細い電線を通って家庭など消費者に届く。血管に例えると大動脈で、消費者に届く電線は毛細血管に当たる。