(大弦小弦)第2次世界大戦中のポーランドで、将校1万5千人が… - 沖縄タイムズ(2018年1月30日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/202397
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第2次世界大戦中のポーランドで、将校1万5千人がソ連軍に虐殺された事件を扱ったアンジェイ・ワイダ監督の映画「カティンの森」。戦後の同国はソ連に支配され、事件の究明は50年間タブーだった

▼夫の帰りを信じて待つ女性に、真相を知る夫の部下が死を伝える。贖罪(しょくざい)感に悩みながらソ連軍の片棒を担ぐ男に、女性は言う。「あなたも連中と同じ。思いは違っても行動は同じ。思うだけでは何の意味もない」

反戦・反差別の信念を持つ「親沖縄派」の政治家といわれた元官房長官野中広務氏の訃報に接し、この場面を思い出した。2000年サミットの名護市開催は沖縄の苦難の歴史に鑑み、故小渕恵三首相と2人で決めたという

▼閉幕から2週間後、名護入りし北部首長を集めた。名目はサミットのお礼だが、実際は辺野古移設の協力要請。会場に小渕氏と梶山静六氏の遺影も持ち込み、移設協議を「ゆっくりやりたい」とする故岸本建男市長をけん制した

▼晩年は保守リベラル派として、安倍政権を「沖縄の痛みを知らない」と批判。だがアメとムチで揺さぶり、基地容認を迫る手法を始めたのは野中氏らだった

▼それでも野中氏がかつて国会で訴えた「県民を軍靴で踏みにじる結果にならないように」との言葉は生き続けなければならぬ。戦争の痛みを知らない政治はやはり恐ろしい。(磯野直)