東京・足立の若年層支援 「あなたは大切」を伝える - 毎日新聞(2018年1月29日)

https://mainichi.jp/articles/20180129/ddm/005/070/028000c
http://archive.is/2018.01.28-214044/https://mainichi.jp/articles/20180129/ddm/005/070/028000c

生きづらさを抱える若者や子供たちに、大人はどう手を差し伸べればいいのか。
ツイッターなどに自殺願望を書き込む若い女性が誘い出され、相次いで殺害された神奈川県座間市の事件は社会に重い課題を残した。
対策を考えるうえで、東京都足立区が区内の小中学校を対象にした取り組みに注目したい。
足立区では2006年に区内の自殺者が東京23区の中で最多となったことから、NPO法人「自殺対策支援センター ライフリンク」などと連携し、本格的に自殺対策に乗り出した。このうち若年層への支援として、14年度から区内の小中学校で、保健師らによる特別授業「自分を大切にしよう」を始めた。
授業では、不安や悩みを持つことは当たり前としたうえで、信頼できる大人を探し、SOSを出して相談することを勧める。さらに複数の相談機関の連絡先を書いた紙を渡し、つらくても信頼できる大人が見つからない時には連絡するよう伝える。
子供時代に家庭の不和で苦しんだ有名人のメッセージや、子供を勇気づけるJポップグループの歌も授業で使いつつ、子供たちに強く訴えるのは「あなたは大切な人だ」ということだ。
この授業を通じ、小中学生ともに親や教師、友人、スクールカウンセラーなどに相談するケースが増えてきたという。
一方、相談を受ける側の教師にも研修を実施している。「死にたい」という相談があったり、自傷行為があったりした場合に心がけることや対処方法を学ぶ。
対策を担当する足立区「こころとからだの健康づくり課」の馬場優子課長は「SOSをしっかり受けとめられるスクールカウンセラーや養護の先生の体制を一層充実させることが今後の課題」と指摘する。
政府が昨年閣議決定した自殺総合対策大綱では若者や子供の自殺予防策として「SOSの出し方教育」を挙げている。足立区を先進例として、政府はこうした取り組みを全国に広げていくべきだ。
さらに、インターネットなどを使った若者への支援は単独の自治体では対応が難しく、国の積極的な支援が必要だろう。