(南城市長に瑞慶覧氏)市民との「協働」深めよ - 沖縄タイムズ(2018年1月23日)

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開票作業が進んでも一向に優劣のつかない大接戦を制したのは、新人で元衆院議員の瑞慶覧長敏氏(59)だった。
任期満了に伴う南城市長選は21日に投開票され、瑞慶覧氏が、4期目をめざす現職の古謝景春氏(62)を65票差で破り初当選した。
昨年実施された市長選で3連敗を喫した翁長雄志知事や「オール沖縄」勢力にとっては、何物にも代えがたい「値千金」の勝利となった。
「敗因が私には分からない」と候補者本人が語っているように、古謝陣営にとっては「まさか」の結果だった。
県市長会会長で、保守系9市長でつくる「チーム沖縄」の会長。3期にわたって市長を務め、合併後の市政を軌道に乗せた。与党系15人に対し、野党系市議3人という与党優位の市議会構成。
市庁舎建設が始まり関係業者の協力を取り付けやすい環境にあったことや、瑞慶覧氏の出馬表明が遅れたこともあって、負ける要素がない、との楽観論が支配的だった。
なぜ、現職は敗れたのか。 古謝氏が強調したのは「実績」と「リーダーシップ」と「政権とのパイプ」だった。古謝氏の強みを前面に押し出した選挙戦だったといえる。
だが、古謝陣営は、3期12年にわたる市政運営で市民の中に不満が蓄積されていたことを重要視せず、見過ごしていた。
「市政刷新」「公平・公正な行政の実現」をスローガンに掲げ、「チェンジ」と呼びかけた瑞慶覧氏が、古謝市政への不満票をすくい取ったのである。

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保育所民営化を巡って生じた市民との溝、とりわけ民営化反対の署名をした市民に対する市側の対応は、市民から見れば「圧力」としか受け取れず市政への不信感を広げた。
「行政運営が強引」「ワンマン化している」という批判に加え、多選批判も根強かった。楽観ムードが漂う選対は、こうした批判に丁寧に対応することができなかった。
安倍政権や自民党本部は南城市長選を名護市長選の前哨戦と位置づけ、党本部から岸田文雄政調会長石破茂元幹事長ら大物を送り、テコ入れを図った。
南城市で勝利することによってその勢いを名護市長選につなげ、稲嶺進市長の3選を阻止することで秋の県知事選の展望を開くという戦略は、出ばなをくじかれたことになる。
南城市長選の敗北に危機感を募らせる政府自民党が、名護市長選の引き締めを図るのは確実である。

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瑞慶覧氏は民主党が政権を獲得した2009年衆院選で当選し、同党が政権の座を追われた12年の衆院選で落選した。
「市民の声を行政に反映させる」という公約をどう実現していくか。圧倒的な少数与党の議会にどう対応していくか。合併によってできた市であることを踏まえ、人事面や地域振興の面で、どうバランスを取っていくか。
反対票を投じた市民にも耳を傾け、公約の実現に向け、スピード感をもって取り組んでもらいたい。