子ども食堂 一緒に味わい楽しもう - 東京新聞(2018年1月15日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018011502000152.html
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子ども食堂」が全国に広がっている。貧困対策の面だけに目が向きがちだが、食と子どもを媒介にした地域の居場所にもなっている、住民らの自発的取り組みだ。息長く続くよう周りも支えたい。
子ども食堂の名付け親といわれているのが、東京都大田区の近藤博子さん(58)だ。
近所の小学校の先生から「母親の具合が悪く、給食以外に満足な食事ができていない子がいる」と聞いたのが動機になった。
同じような子がもっといるかもしれないという思いに動かされ、みんなで食事ができる場をと、約五年前の二〇一二年八月から始めた。子どもに「一人で来ていいんだよ」との呼び掛けと、大人にもどうぞ、との気持ちを込めて名付けたという。
近藤さんらの、心をとらえる取り組みが共感を生み、この数年で食堂の数は急速に増えた。「こども食堂ネットワーク」(東京都渋谷区)によれば、全国で五百カ所以上にもなった。
運営者は、NPO法人、生活困窮者支援にかかわってきた人、住民の有志らさまざまだ。
昨年発足した「あいち子ども食堂ネットワーク」でもそうだが、食堂同士で連携を図っているケースが多く見られる。地域ごとに活動が多様なことも、子ども食堂の持ち味になっている。
名古屋市郊外のある街。まだ新しい子ども食堂で、子育てを終えた世代の女性らが調理に腕をふるっている。女子高校生や大学生がはつらつとボランティアに励んでいる。子どもがはしゃぎ、お母さんらは「きょうは骨休みができます」とほっとした表情だ。
「初めは気づかなかったけど、独り暮らしのお年寄りや、孤食の子も来始めました」と、運営責任者が話すように、居場所として定着してくれば、子どもが子どもを誘って来てくれるようだ。
ただ、子ども食堂は低料金で歴史が浅いだけに課題も多い。場所や人、お金、安全衛生…。善意や寄付などでまかなわれているが、持ち出しが少なくないのも現実だ。
こうした課題に、行政も過剰にならぬ範囲で支援をしてほしい。
七人に一人が貧困状態ともいわれる日本の子ども。経済状態に関係なく“孤食”はある。
本当に困っている子どもにどう足を運んでもらうか。みんなでわいわい食べることができる敷居の低い「居場所」が、解決へのきっかけにはなる。