(18歳成人案)自覚と保護 どう両立 - 沖縄タイムズ(2018年1月15日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/195046
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政府は22日に召集する通常国会に、成人年齢を現行の20歳から18歳に引き下げる民法改正案と、それに伴う24の関連法改正案を提出する方針だ。
投票年齢を18歳以上とする国民投票法の成立、選挙権を18歳以上に引き下げる公選法改正の流れの中で進むものだが、成立すれば明治時代から続く「大人の定義」が変わる。
国民生活に広く影響を及ぼす法案である。当事者となる若者の声をすくいあげ、慎重かつ丁寧に議論を進めてほしい。
成人年齢を18歳とする民法改正案では、女性が結婚できる年齢を今の16歳以上から男性と同じ18歳以上に統一する。未成年の結婚に父母の同意が必要との条文も削除する。
2歳の違いは、女性の方が成熟が早く、夫が経済的にリードするとの考え方に基づくものだという。だが国際的には女性の教育や雇用の機会を制限する規定として批判が強い。
国連の女性差別撤廃委員会は18歳以上に引き上げることを繰り返し勧告しており、男女平等をうたった憲法に照らしても必要な改正である。
他方、20歳未満に禁じている飲酒と喫煙は現行法の規定を維持する方向だ。公営ギャンブルの解禁年齢も同様である。
健康被害や依存症への懸念などから引き下げには慎重意見が根強く、多くが高校3年生で成人となることを考えればもっともな対応だといえる。

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危惧されているのは消費者被害の増大である。18、19歳でも親の同意なしにクレジット契約を結んだり、お金を借りたりすることができるようになるため、知識や経験不足につけ込むケースが増えるのではと心配されている。
今も、成人して間もない若者の消費者被害は多い。県内でも昨年、大学生ら若者をだまし消費者金融から借金をさせる「名義貸し」が大きな問題となった。
改正案では消費者契約法に、恋愛感情に乗じる「デート商法」や不安をあおる商法など、合理的判断ができない状況で結んだ契約は取り消せるとの新規定を追加する。
必要な措置ではあるが、保護の仕組みとしてどれだけ機能するのか。審議を通して明らかにしてもらいたい。
被害を防ぐには悪質業者を見抜く目が求められる。ネット取引など手口は巧妙化しており、小中高校での消費者教育の充実も不可欠だ。

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おととし共同通信が18、19歳の若者を対象に実施した世論調査では、3分の2が引き下げに反対だった。大人になることの意義が理解できないまま、大人としての責任や義務に不安を感じているのだろう。
成人年齢引き下げの流れの中で、少年法の適用年齢も焦点の一つだ。引き下げは立ち直りの機会を奪いかねず、国民の意見も割れている。一緒くたに論じる問題ではない。
大人としての自覚を促すことと保護の両立をトータルで考えていく必要がある。