(大弦小弦)かつて自由と団結、反権力のフォークソングを次々と世に放った… - 沖縄タイムズ(2018年1月9日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/192307
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かつて自由と団結、反権力のフォークソングを次々と世に放った歌手の岡林信康さん(71)と、基地問題を漫才にして話題のコンビ「ウーマンラッシュアワー」の村本大輔さん(37)が年末年始の桜坂劇場でそれぞれライブを開いた。チケットは完売

▼岡林さんの客席を埋めたのは1960年代の若者たちだ。最初のアルバム「私を断罪せよ」が出たのは69年。ベトナム反戦運動などと相まって時代の寵児(ちょうじ)となり、影響力を恐れられ米占領下の沖縄への渡航が許可されなかった

▼だがその立場に疲れ果て、絶頂期に失踪。ごく一部を除いて過去の曲を封印し今に至る。軽快なトーク中、客席から沖縄に向けた言葉を請われたが「僕は無力だから」と言わなかった

▼それでも圧巻は、被差別部落に生きる少女の悲しみを歌った「チューリップのアップリケ」。50年前の曲が今も胸に響くのは問題が何も解決せず、込められたメッセージが生きているから

▼村本さんには多くの若者が集った。批判されている「沖縄はもともと中国のもの」発言を「知らなくてごめんなさい」と素直に謝罪。「悩んでいる人がいたら『どうしたの』と声を掛けたい。それが広がれば沖縄も原発も」

▼2人に共通する弱者への視線。プロとして自由な創作を続けてほしい。私も帰り道、留飲を下げて終わりではだめだと思った。(磯野直)