死刑囚2人の死刑を執行 1人は犯行当時19歳 - NHK(2017年12月19日)

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20171219/k10011263581000.html
http://archive.is/2017.12.19-024824/https://www3.nhk.or.jp/news/html/20171219/k10011263581000.html

平成4年に千葉県市川市で会社役員の一家4人を殺害した罪に問われ死刑が確定した関光彦死刑囚ら2人の死刑が19日午前、執行されました。関死刑囚は犯行当時19歳の少年で、犯行当時少年の死刑囚に死刑が執行されたのは永山則夫元死刑囚以来です。
死刑が執行されたのは関光彦死刑囚(44)と松井喜代司死刑囚(69)の2人です。
関死刑囚は平成4年3月、千葉県市川市で会社役員の一家4人を殺害したとして強盗殺人などの罪に問われ、平成13年に死刑が確定していました。
関死刑囚は犯行当時19歳の少年で、犯行当時少年の死刑囚に死刑が執行されたのは永山則夫元死刑囚以来です。
松井死刑囚は平成6年2月、群馬県安中市で、交際していた女性とその両親の合わせて3人を殺害したとして殺人などの罪に問われ、平成11年に死刑が確定していました。
2人はいずれも再審=裁判のやり直しを請求していました。
第2次安倍内閣発足以降で死刑が執行されたのはことし7月以来12回目で、合わせて21人になりました。
犯行時に少年 死刑の妥当性争われる
死刑が執行された関光彦死刑囚(44)は平成4年、当時19歳のときに千葉県市川市のマンションで会社役員の男性(当時42)の一家を殺害したとして強盗殺人などの罪に問われました。
男性とその妻、母親、それに4歳の次女の4人が殺害された重大な事件でしたが、犯行当時、少年だったことから裁判では死刑を科すことが妥当かどうかなどが争われました。
1審と2審が「極めて残虐な犯行だ」として死刑を言い渡したのに対して、弁護側は「被告は親からの虐待などの影響で十分な判断ができなかった」などとして上告しました。
平成13年、最高裁判所は「暴力団関係者から要求された金の工面のため家に押し入り、4人を次々に殺害した残虐な事件で、少年だったことを考慮しても極刑はやむをえない」として上告を退け、死刑が確定しました。
NHKは少年事件について、立ち直りを重視する少年法の趣旨に沿って原則匿名で報道しています。この事件が一家4人の命を奪った凶悪で重大な犯罪で社会の関心が高いことや、死刑が執行され社会復帰して更生する可能性がなくなったことから、実名で報道しました。
松井死刑囚 交際相手と家族を次々殺害
松井喜代司死刑囚は、平成6年に、群馬県安中市で交際していた当時42歳の女性とその両親の合わせて3人を殺害し、女性の妹などにけがをさせたとして殺人などの罪に問われました。
1審の前橋地方裁判所高崎支部と2審の東京高等裁判所はいずれも死刑を言い渡し、松井死刑囚は「事件当時は正常な判断ができない精神状態だった」などとして上告しました。
平成11年、最高裁判所は「交際相手にだまされていたと思い込み殺害したうえ、相手の家族を次々に殺した責任は重大で、死刑はやむをえない」として上告を退け、死刑が確定していました。
再審請求中でも執行 法務省の姿勢明確に
再審請求中の死刑囚への執行はこれまで避けられる傾向がありましたが、前回に続いての異例の執行となりました。
法律では判決の確定から、原則6か月以内に死刑を執行するよう定めていますが、法務省によりますと、平成19年から去年までの10年間で、刑の確定から執行までの期間は平均でおよそ5年となっています。
刑の確定から数十年たっても執行されていない死刑囚がいる一方で、確定から1年たたないうちに執行されたケースもあります。
法務省は執行の順番や時期をどのように決めているのか具体的な判断基準を明らかにしていませんが、再審=裁判のやり直しを求めているケースは執行されにくい傾向があります。
これは死刑が執行された後に再審が認められるという事態を避けるために慎重に判断しているものと見られますが「再審が執行を逃れる手段になっている」という見方もあります。
今回は、前回7月の執行に続いて再審請求中の死刑囚が対象となり、請求の有無にかかわらず執行するという法務省の姿勢が明確になってきています。
法相「慎重に検討した」
上川法務大臣法務省で臨時に記者会見し「いずれの事件も誠に身勝手な理由から被害者の尊い人命を奪うなどした極めて残忍な事案で、裁判所で十分な審理を経たうえで最終的に死刑が確定したものだ。このような事実を踏まえ、鏡を磨いて磨いていく、そういう心構えで慎重にも慎重な検討を加えたうえで執行を命令した」と述べました。
そのうえで、犯行当時少年の死刑囚に死刑が執行されたことについて「先ほど申し上げたとおりの考えにのっとって今回の判断をした。犯行時少年だったことについては、個々の死刑執行の判断に関わる事項なので答えは差し控えたい」と述べました。
また記者団から死刑執行と再審の請求について問われたのに対し「再審請求を行っているから死刑執行はしないという考え方はとっていない」と述べました。
犯行当時少年でも厳罰化の流れ
少年が起こした重大な事件では、立ち直りを重視する少年法の趣旨に照らして死刑を科すべきかどうかが争われてきました。
少年法には被告が犯行当時少年だった場合は成人より刑を軽くする規定があり、18歳未満には死刑が適用されません。
最高裁判所は、犯行当時少年だった永山則夫元死刑囚が拳銃を使って市民4人を殺害した事件で、犯行の悪質さや、被害者の数、被告の年齢など、死刑を適用する際に考慮すべき事情を挙げました。
その後、永山死刑囚は死刑が確定し、平成9年に執行されました。
犯行当時少年の死刑囚に刑が執行されたのは、この時以来です。
平成に入ってからは市川市の事件のほか、大阪、愛知、岐阜で元少年3人が若い男性4人に暴行を加えて殺害した事件や、山口県光市で18歳になったばかりの元少年が主婦と幼い娘を殺害した事件、宮城県石巻市元少年が交際相手だった女性の姉など2人を殺害した事件で死刑が言い渡され、確定しています。
このうち山口県光市の事件では平成18年に最高裁判所が「少年というだけでは死刑を避ける決定的な理由にならない」という判断を示し、厳罰化の流れが決定づけられました。