CH53E飛行再開へ 米本国では許されない - 琉球新報(2017年12月19日)

https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-633426.html
http://archive.is/2017.12.19-003323/https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-633426.html

米軍の不誠実な対応と日本政府の米国追従ぶりは、目に余る。
普天間第二小米軍ヘリ窓落下事故を受け、飛行を控えていた米軍普天間飛行場所属のCH53E大型輸送ヘリコプターの飛行を再開する方針を米軍が県などに伝えた。事故原因について米側は「人的要因」と説明した。だとすれば訓練が必要だろうし短期間の飛行再開は納得できない。
海兵隊普天間第二小学校の喜屋武悦子校長に安全点検と搭乗員に対する教育を徹底できたとの認識を表明。最大限、学校上空を飛ばないようにすると米軍内で確認したことを伝えた。これに対し「最大限の確認では納得できない」と喜屋武校長が述べたのは当然だ。飛行禁止にすべきだ。
結局、防衛省は飛行再開のために必要な措置が取られたとして、飛行再開の容認を決めた。県民にきちんと説明しないまま、米軍の言いなりである。これでは米軍の代行機関ではないか。
この1年間、米軍機の事故が頻発している。その都度日本政府は、米軍の飛行再開を容認してきた。翁長雄志知事が指摘するように「当事者能力がない」。
CH53Eは2004年に宜野湾市沖縄国際大学に墜落したCH53Dの後継機。30年以上運用し、アフガニスタン紛争にも投入された。老朽化が進み部品が枯渇して、海兵隊航空機の中でも最も深刻な整備と即応性の課題が指摘されている。飛行可能は37%という米国報道もある。だから今回の事故が「人的要因」というのは説得力がない。
順次退役が決まっているが、積載量の増加やコックピットの近代化などを打ち出した新型機CH53Kは開発が遅れ、今年4月に生産体制が整ったばかりだ。
今年10月11日に東村高江で不時着炎上したCH53は、1週間後の18日に通常飛行を再開した。発表文で米軍は「整備記録」を確認した結果、飛行再開を決めたとしたが、原因究明や再発防止策の説明は一切なかった。
この時、ローレンス・ニコルソン在沖米四軍調整官は「われわれは日本における米海兵隊航空機の飛行の安全性を約束している。安全ではないと思える運用は決して許さない。CH53Eヘリは沖縄や日本本土で長年、日米同盟に奉仕してきた信頼できる航空機だ」と述べた。
にもかかわらず今回、落下事故が発生した。米本国では短期間の飛行再開は許されないだろう。
昨年12月の北部訓練場過半の返還を記念した式典で、菅義偉官房長官は「今回の返還は日本復帰後最大の返還であり、沖縄の米軍施設の約2割が返還され、沖縄の負担軽減に大きく寄与する」と強調した。だが沖縄で起きているのは「負担強化」でしかない。
現状を改善できないなら、日本政府は米国の「共犯」と言われても仕方ない。